極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「ウソでしょ。あの裕ちゃんまで、浮気を……」
いや、待てよ。
最初から好きじゃないなら、羅良のは浮気って言えないか。いや違うそうじゃない。
「ふたりとも信じられない。もっとちゃんと話して」
どうしてお互いに好きでもないふたりが付き合い、婚約したのか。
「もうダメ。買ったものが悪くなっちゃうから、帰らないと。あのひとの夕食を作らなきゃ」
エコバッグを持ち立ち上がる羅良が、薄暗い公園の街灯に照らされる。
その姿はまるで発光しているよう。失踪以前よりも、ずっといきいきしている。
「希樹はいいの? 遅くなるって、裕ちゃんに言ってある?」
「裕ちゃんは、いつも帰りが遅いから」
時計を見ると、もうすぐ六時半になろうとしていた。
「そう。でも私は帰るよ。あの人の帰ってくる家が、私の帰る場所なの」
羅良のセリフが、やけに重たく胸に響く。
私が帰るべきなのは、いったいどこなのだろう。