極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「詳しい話が聞きたいなら、裕ちゃんに聞くと良いよ」
「でも……教えてくれるかな」
「大丈夫よ、きっと」
羅良は歩き出す。私もその後についていく。靴を羅良のアパートの前に捨ててきたからだ。
追いかけているときは必死で気にならなかったのに、今は裸足でいることがひどく寒くて恥ずかしい。
アパートの前に着くと、羅良が階段を上がり、私の靴を持ってきてくれ、そろえて地面に下ろした。
「これからは、私のことじゃなくて、自分のことをなんとかする時だよ、希樹。希樹はいったいどうしたいのか、よく考えてみて」
「う、うん……」
「じゃあね」
羅良はアパートの扉の中に入ってしまった。
私は初めて羅良に突き放されたのかもしれない。
一番近くで理解していると思っていたのに、実は私は、彼女の本質を何も知らなかった。
「好きなひとがいるなら、相談してくれればよかったのに……」
一抹の寂しさをぬぐい、靴を履いた。
ストッキングが破れているのにも構わず、タクシーを呼びだす。
もう、走る力は残っていなかった。