極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

 さっきまで目をつり上げて怒っていたのに、急に弱った声になる裕ちゃん。

「実家のことなんてどうでもいい。私はこんなバカげた茶番に、もう付き合っていられない。本当に好きな人と、どうぞお幸せに!」

 帰ってきたばかりなのに、ドアを開けて部屋を出た。

 駆け出す私の手を、後ろから裕ちゃんがとらえた。

「待て! 話を聞け!」

「やめて! 大声出すわよ!」

「出せばいいじゃないか。俺だって叫んでやる。俺が好きなのは、お前だ!!」

 一瞬、時間が止まったような気がした。

 裕ちゃんが私をぐいと引き寄せる。

 だけど、私は思い切りそれを拒否した。

 抱きしめられたら、キスされたら、私は裕ちゃんを許してしまう。

 このわけのわからない生活を、ずるずると続けてしまう。

 必死で手を振り払い、叫んだ。

「ウソつきっ! 私が何の経験もないからって、バカにするのもいい加減にして!」

 裕ちゃんの顔が、悲しげに歪み、凍り付いていく。

 それを見ないようにして、私は駆け出した。


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