極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「二人とも他に好きな人がいたんだけど、会社のことを考えたら言いだせなかったんだって。羅良は本当に好きな人と一緒にいたくて、家を出たの」
真っ青な顔でうなだれる母。
残酷なことを言っていると、自分でもわかっている。
でももう、どうにもならない。
「羅良が戻ってくることはない。なら私が、偽妻を演じる必要もない。よね?」
両親は押し黙ったままだ。
「だって、このままじゃ裕ちゃんも幸せになれない。彼は羅良がいなくなって、本当はホッとしたのかもしれない。結婚なんてしたくなかったんだろうし」
自分の言葉が、自分の胸を切りつける。
私との偽装結婚を、彼はどう思っていたんだろう。
「ねえ、お父さん。羅良のためにも裕ちゃんのためにも、このことをちゃんと話し合って、結婚をなかったことにできないかな」
「うう……」
父の顔が、青くなったり赤くなったり、白くなったりする。
今にも首を吊ってしまいそうな様子に、ハラハラした。
やっぱり、父はそう簡単に決断できなさそう。
「お父さん、会社より娘の幸せよ。羅良とそのお相手の間を認めてあげれば、また会えるようになるし」
「そうそう。孫の顔、見たいでしょ? 可愛い娘が帰ってくるかもだよ?」
折れかけた母に加勢する。
「そうか……俺の羅良……手塩にかけた娘……」
泣きそうな父に、母がつっこむ。