極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
泣きそうな父に、母がつっこむ。
「生活も学校も習い事も、全部面倒見ていたのは私だけどね。手塩にかけたの、私だけどね」
「ああ、ごめんようママ」
父は仕事が忙しく、家や子供のことは母に丸投げだった。
その逆襲を、今されている。
「それに、裕典さんがダメなら、健太郎さんがいるじゃない」
「おっ」
「えっ」
父がひらめくのと、私が声をあげたのが同時だった。
「健太郎さんと希樹を結婚させれば、問題解決よ! どうしてもっと早く思いつかなかったのかしら!」
「本当だな! 早く健太郎くんにオファーを!」
両親は希望に目を輝かせ、手を取り合う。そのまま踊り出しそう。
「ちょ、ちょっと待って」
オファーて。不祥事で出られなくなった芸能人の代わりを探すテレビ番組のプロデューサーじゃあるまいし。
健ちゃん、軽く「いいよ!」って承諾しちゃいそうだし。
「ねえ、手塩にかけなかった娘の幸せも、ちょっとは考えてよ」
二人の肩を叩くと、ふたりはきょとんとした。
「え、お前も彼氏がいるのか?」
「結婚するあてでも?」
ピュアな目で見つめられ、泣きそうになった。つらい。つらみが深い。