極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
実家のベッドで目が覚めた。
アラームに起こされず、自然に目が覚めるまで眠ったのは、久しぶりだ。
もう、洗濯も掃除もしなくていい。苦手な料理をすることも。
「ってあんたねえ、ちょっとは手伝いなさいよー」
母は夕方までパジャマのままでいた私を、叱った。
「本当に嫁の貰い手がなくなるわ」
「いいじゃんよー、今まで奉公に出てたんだもん」
「私なんてねえ、結婚してから今まで休んだことないわよ!」
大変ですねえ。結婚って。
なら私は、もう誰とも結婚できなくていいや。子供もいらない。
こうして親に全部やってもらってダラダラ暮らすの、最高すぎる……!
健ちゃんのこと、おさぼりマンとか言って悪かったな。
私も他人のこと言えないや。
裕ちゃんはあれから、何も言ってこない。
このまま時が止まってしまえばいいや、と思う。
もう、自分の力で事態を変えようという気力が湧かない。
母が今後のことを口に出そうとするたび、私は自室に逃げ込んだ。
まるで引きこもりの人のように、部屋でうずくまり、ネットやテレビを見て過ごした。
「ねえ、そろそろ晩御飯?」
午後六時ごろ、自室から出て一階へ降りると、母は盛大なため息を吐いた。