極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「羅良が某所で他の人と一緒に暮らしていること、裕ちゃんも他に好きな人がいること。私が知っているのはそれだけ。だからふたりもそれしか知らない」
重い空気が張りつめる中、裕ちゃんはうなずいた。
「そうか」
彼はひとり、出された雁金を一口すする。
「それは羅良から直接聞いたのか」
「そうよ」
うなずくと、沈黙が落ちた。
少し考えを巡らせているふうだった裕ちゃんが、口を開く。
「……すみませんでした。今彼女が話したことは、事実です」
両親は息を飲んだ。
「羅良が俺を愛していないことを俺は知っていたし、俺も羅良ではなく、他の女性を見ていた。それは紛れもなく、真実です」
裕ちゃんの低い声が、余計に空気を重くした。
胸が握りつぶされそうだ。
私が諦め、長年痛みをこらえて応援してきたものは、いったい何だったのか。
「すべてちゃんとお話するには、羅良の了解が必要です。羅良がいない場所で彼女の事情を話すことはできません」
「そう……そうですよね、個人情報ですものね」
母が若干的外れな相槌を打つ。