極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「ごきげんよう。こちらはちっとも、ご機嫌よくないのだけど」
お義母さんの横にはお義父さん。裏から使用人らしき男のひとがふたり。
彼らに抱えられるようにして入ってきたのは、なんと羅良だった。
まるで私と入れ替わったかのように、楽そうな部屋着でノーメイク、髪は無造作に下ろしたままになっていた。
完璧だったお嬢さまの面影は、そこにはない。
「星野さん! 羅良!」
何事かと様子を見に来た両親は、名前だけ呼んで絶句した。
一瞬にして人口密度の上がった玄関先で、私たちは凍り付いたように動けなくなった。
「裕典、これはどういうことかしら?」
NASAに連行される宇宙人のような格好で、羅良が輪の中心に出される。
「この人が、羅良さんよね? で、私をもてなしてくれたそっちの人が、希樹さん。そうでしょう」
「今日はどっちもどっちな格好をしているな」
お義父さんの言葉で、今度こそ本当に、後悔した。
何をって、だらだら夜中まで着替えずにパジャマでいたことを、だ。
「どうして……あなたたちは、羅良が失踪したことを知らなかったはずだ」
珍しく裕ちゃんが戸惑った表情を見せた。