極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「裕典と一緒にいるのが本当の羅良さんなら、ご実家に希樹さんがいるはず。けれど希樹さんはいなかった。調査結果では、突然会社を辞め、田舎に療養しに行ったと」
会社の誰かが証言したのだろうか。
私は羅良を見つめる。
羅良はうなだれ、誰とも目線を合わせなかった。
「その後、希樹さんがどこに行ったのか、消息はつかめなかった」
そりゃそうだろう。ここにいるんだもの。
「今俺のマンションにいるのが希樹だとしたら、羅良はどこにいるのか。そう思って、今度は彼女を探した」
裕ちゃんが低い声で言うと、興奮で頬を上気させたお義母さんの声が大きくなった。
「ええ、結婚式の少し前からの交友関係、仕事関係、全て洗わせてもらったわ。徹底的に調べさせ、やっと居所をつかんだと思ったら!」
今にも殴りかからんばかりの勢いで、お義母さんが羅良を見下ろす。
羅良は何も言わず、じっとしていた。
「あなたたちは知っていたんですか!? この子、他の男と駆け落ちしていたのよ!」
靴のまま玄関を上がってきそうなお義母さんを、お義父さんが止める。
「妻がしたことも常軌を逸していないとは言い切れないが……。どういう事情があれ、あなたたちは私たちを騙していた」