極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「羅良!」
私は彼女を抱きとめた。
「……今、なんと言ったのですか」
父がぼそりと零した。
「私の娘をふたりとも、アバズレだと、そう言ったのですか」
震える声に、帰ろうとしていた義両親が振り向いた。
「そうですけど? 二股娘に、恋人でもない男性と一緒に住める節操のない娘。ふたりともアバズレじゃあありませんか」
悪い魔女のようにニッと笑う義母に噛みつくように、父は吠えた。
「そう、かもしれませんけどっ。僕にとって、ふたりはかけがえのない娘です」
義父が振り返り、一瞬慄く。けれど父は、息を吸いこんで一気に吐き出した。
「そちらの息子さんだって、羅良を愛していなかったんだ! 他に、女がいるって……こっちだって、うちの娘たちを馬鹿にするようなことをされて、へこへこしているだけと思うなよっ! 絶対に、許さないからな!」
「あなたよくも私たちにそんな口を……」
カッと目をむき、父は溜まっていたものを吐き出すように叫ぶ。
「出ていけっ! おい、お前塩を持ってこい」
「あ、あなた」
「会社がなんだ! 娘を愚弄されて、黙っていられるか!」
暴れ出しそうな父を母が押さえると、義母が鼻を鳴らす音が聞こえた。