極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

「そう、そういうこと。もうわかっただろ」

 やっと問題集を二ページやり終えたとき、裕ちゃんが優しく笑って、頭をなでてくれた。

 時計を見ると、裕ちゃんが来てから一時間も過ぎていた。

「ごめんね裕ちゃん。私に付き合っていて、自分の勉強ができてないよね」

「ん? 大丈夫だよ。俺は頭がいいから」

 冗談っぽく笑い、裕ちゃんは自分の勉強に戻った。

 さらさらと、ノートの上をすべるシャーペンの音だけが響く。

 私はこのまま、時が止まってしまえばいいと思っていた。

 このまま、裕ちゃんを独占していたいと……。




 目覚めると、顔が濡れていた。

 泣いていたのだと理解するまで、数秒。

 起き上がり、パジャマの袖でごしごしと顔を拭く。

「これじゃいけない」

 今日こそは、ちゃんと着替えて、顔を洗って、メイクするんだ!

 ぐだぐだ家の中に閉じこもっているのは、私らしくない。

 羅良が家を飛び出したように、私も勇気を出さなきゃ。

「あら希樹。もうお昼よ」

 洗面台を使っていると、通りかかった母に声をかけられた。

 明け方に寝て、お昼に目覚めてしまったらしい。

 偽装結婚で培った生活リズムはいったいどこへ。

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