極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「ねえお母さん、結婚って大変だったよ。実家に住んで仕事に行っている方が、よっぽど楽だった」
顔をタオルで拭きつつ言うと、母は笑った。
「やっと私のありがたみがわかったわね」
私は素直にうなずく。ちゃんと生活するって、思っていたよりも大変だった。
「でも、楽しかった」
裕ちゃんとの日々を思い出す。
いってらっしゃいと、お帰りなさいのキス。
食事を一緒にする。裕ちゃんが美味しそうな顔をしてくれると、もっと頑張ろうと思えた。
お風呂こそ別々だったけど、いつも同じベッドで寄り添って眠った。
大変なこともあったけど、裕ちゃんが一緒だったから、楽しかった。
「そう。そんな風に思える相手と、いつか、本当の結婚ができるといいね」
母はそう言って、忙しそうに去っていった。
父はいつも通り仕事に行ったらしい。
昨夜羅良が帰ったあと、「これからは星野グループに見限られてもやっていけるようにしなくては」と、今までより闘志を燃やしていた。
そういうところが、私の父だよなあと、ぼんやり思った。
さあ、私はどうする。
自室で化粧をしようと思ったら、メイク道具がないことに気づいた。