極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
一日前……。
「希樹、起きてっ、希樹(きき)!」
セットしておいたアラームが鳴るより早く、部屋のドアを叩く音で目が覚めた。
「なによ……」
のそりと起き上がり、パジャマのままドアを開けると、真っ青になった母が立っていた。小刻みに体を震わせている。
「どうしたの?」
「羅良が、羅良がいないの」
「ララが?」
私は母の横をすりぬけ、すぐ隣の部屋のドアをノックもせずに開ける。が、中はもぬけの殻。
「トイレじゃない?」
「違うわよ。私、探したもの。玄関が開くような音がしたからびっくりして起きたら、羅良がいないの」
五十歳を過ぎているのに、いまだにどこか少女らしさを残した母。今にも泣きそうな声で私に訴えてくる。
やけに胸騒ぎを覚えた母がまず向かったのが、姉の羅良の部屋だったらしい。それだけで姉が私より大事にされていることがわかる。
「まさかあ。家出でもしたって言うの? やけに早く起きちゃって、コンビニにでも行ったんじゃない?」
私は双子の姉、羅良の部屋に無断で入る。
部屋の中は綺麗に整理されていた。ドレッサーの隅に、小さな紙が裏返しにして置かれている。
「……メモ?」
指でそれをつまみあげた私は絶句した。
可愛いパンダのメモ紙には、こう書かれていた。