極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~

「どこに帰るって言うんだ?」

 ダブルベッドに近づいた裕ちゃんにたずねられ、私は首を傾げる。

「どこって……家に決まって……」

 発言の途中で、裕ちゃんがベッドに片手をついた。整った顔が、眼前に迫る。

「ここで花嫁が帰ったと知ったら、周りはどう思う?」

「あ……」

 このホテルに泊まっているのは、私たちだけじゃない。遠方から来たゲストもだ。

 うっかり身内に姿を見られたりしたら、どうして私だけが帰るのか不審に思うだろう。

「いいか、お前はもう俺の妻なんだ。自覚を持って行動しろ」

「そんなこと言われたって……」

 昨日の今日で、いきなり御曹司で副社長の妻としての自覚を持てって言われても。

「もうお風呂上りにブラパンでダラダラできないの?」

「それは独身でもするなよ」

 裕ちゃんは苦笑し、私の頭についていたティアラを外す。

「今日のお前は綺麗だよ。外見は、申し分ない」

 それは、私の顔が羅良に似ているから……。

 言葉のとげが、チクリと胸に刺さる。

 愛しい人を見る目で、私を見ないで。苦しくなるから……。

「中身が別人なのはわかっている。だけど、親父さんたちのために、演じきれ」

 被害者は私じゃない。一番傷ついているのは裕ちゃんだ。それを忘れちゃいけない。
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