極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
新居にお引越し
披露宴の三日後、羅良の代わりに私が新居に引っ越すことになった。
準備が間に合うはずもなく、引越し業者が来るぎりぎりまで荷造りするはめに。
Tシャツで汗を流していると、父がふらっと私の部屋に顔を出した。
「お前もとうとう嫁に行くんだなあ……」
「現実逃避はやめてよね」
本来なら、羅良の門出を涙ながらに見送るはずだった父は、私を代償にして雰囲気を味わっている。
「おい、そんな味もそっけもないTシャツばかりじゃなく、羅良の服を持っていけよ」
ツッコまれた父が反撃に出た。
ダンボールに押し込まれた私の服は、たしかにスポーツブランドの発汗Tシャツと、ジャージが多い。
上着と言えば、くるぶしまであるベンチコートだ。確実に温かい。
逆に、羅良のは清楚系OL服。基本パステルカラーのふんわりしたブラウスや、スカート。
「羅良の服って可愛いけど、動きにくいんだよねえ……」
仕方がないから、さっと首を通すだけでよさそうなワンピースなど、何点かダンボールに詰める。
急な来客のときに役立つだろう。
「そうだ、仕事場に挨拶に行かなきゃ」
急といえば、私の退職もかなり急、しかも月末でもない意味不明なタイミングだ。
今日は無理でも、近いうちに挨拶に行かなくては。