極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
ほぼほぼ同じ遺伝子を持って生まれたのに、私には彼氏すらいない。
大人になって髪を伸ばしてから少年感は薄まったものの、にじみ出るガサツ感はぬぐいきれないのか。
「はは。でも羅良の求める幸せは、それだけじゃなかったってことだな」
自虐的に笑った裕ちゃんは、鳴らされたインターホンの応対に向かう。
「引越し業者が来た。お前の荷物は羅良の部屋になるはずだったところに置いてもらう。いいかな」
「もちろん」
私の荷物は、段ボール数個しかない。
羅良専用の部屋になる予定だったベッドルームには、彼女の趣味丸出しの、西洋アンティーク風の可愛い家具があちこちに配置されている。
引越し業者さんたちはてきぱきとダンボールを運び、三十分もせずに引き揚げていった。
「宝の持ち腐れ……」
ベンチコート一着と仕事用コート二着、実家から本人に無断で持ち出した羅良のワンピースだけをかけられた、ほぼすっからかんのウォークインクローゼットを見て、なんだかとても申し訳なくなる。
シュークローゼットに至っては、スニーカー数種類とスポーツサンダル、仕事用ぺたんこシューズとショートブーツのみ。
本来ここに置かれるのは、一足最低でも十万はする、ルブタンのヒールであるはずなのに。
裕ちゃんの物も置いてあるけど、それでもスペースに余裕がありすぎる。