極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
義弟と実姉が鬼すぎる
副社長として働いている裕ちゃんを、私は見たことがない。
オフィスラブや接客業でもない限り、結婚相手の仕事をしている姿を直接見ることって、少ないんじゃないだろうか。
だから私は、妄想する。
スーツを身に纏った裕ちゃんが、どっしりした黒く光る机に座り、仕事をしているところを。
仕事相手にメールを送ったり、文書の確認をしている彼の元に、たまに美人秘書が来て、お茶を出す。
外に出ていくときは会社の車で、運転手がついている。
移動中だけが、彼がゆっくり心を休めることができる時間だ。
なんて妄想をしながら、マンションの近くを電動自転車で移動する。買い物などに便利だからと、裕ちゃんが買ってくれたものだ。
自動車免許でも取りにいこうかなあ。暇だしな。晴れの日はいい運動になるからいいけど、雨の日が困る。
自転車のカゴには、ドラッグストアで買った生理用品が積まれている。
食品その他は裕ちゃんが車を出せるときにまとめ買いか、宅配を利用すればたいていなんとかなる。
なのに私ときたらうっかりして、生理の時期を忘れ、生理用品を新居に持ち込むのを忘れていた。
いきなりそのときが来て思い出し、化粧ポーチの中の予備品で手当てをしているのである。