極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
裕ちゃんが帰ってくるのは、早くても七時。
それまでに、ソファで何もせずにゴロゴロするこいつをみながらご飯を作り、洗濯物を畳まなくてはならないのか。
嫌だ。
本能が叫んでいる。
でも、義両親に秘密を話されたらと思うと、石のように口が動かなくなる。
なすすべもなく、石像のように固まっていた、そのとき。
「断る」
断固とした声が、後ろから響いた。
驚いて振り向くと、まだ帰ってくるはずのない裕ちゃんがこっちに歩いてくる。
「裕ちゃん」
「な、なんだよ兄貴。副社長がこんなに早く帰ってきていいわけ?」
裕ちゃんの全身から、怒気が噴出している。
イケメンのしかめっ面は迫力があって、見ているだけでハラハラする。
「お前、いったい毎日何をしに来ているんだ。何が目的だ」
裕ちゃんは私を守るように、自分の後ろに隠した。
「ええ……別に遊びに来たっていいじゃん……」
「毎日来たら迷惑だって、子供でもわかるだろ」
「他人の家じゃないからいいじゃん。義兄弟じゃん」
「じゃんじゃんうるさい! お前と羅良は他人なんだ! つつしめ!」
しつけの悪い犬を調教するように、裕ちゃんは健ちゃんを指さし、決然と言った。
健ちゃんは一瞬怯んだけど、ごくりと唾を飲むと、裕ちゃんをにらみ返す。