極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
「本当は、羅良ちゃんじゃない。彼女は希樹ちゃんだ」
「何を根拠に」
筋肉だよ、と私は心の中で言う。
「ずっと羅良と付き合ってきた俺が、なぜ希樹と結婚をする?」
さらさらと言う裕ちゃんの言葉が、ずしりと胸にのしかかる。
あれ……どうして私、嫌な気持ちになっているんだろう。
「それは……だから、他人に言えない事情があるんだろ?」
「言いがかりも大概にしておけ。兄弟でも名誉棄損で訴えるぞ」
しっしっと、まさに犬を追い払うような仕草で、健ちゃんに手の甲を振る裕ちゃん。
「だって、どっからどう見ても希樹ちゃんじゃないか。ふたりとも、どっかよそよそしいし。本当にずっと付き合ってきた羅良ちゃんだって言うなら、それこそ証拠を見せろよ」
健ちゃんの苦し紛れのセリフが、終わるか終わらないかの瞬間だった。
裕ちゃんが、強い力で私を抱き寄せた。
とても抗えない力で私を抱きしめた裕ちゃんが、噛みつくように乱暴にキスをする。
それは、今までの触れるだけのキスとはまったくの別物だった。
熱い吐息が、喉まで流れ込んでくる。
裕ちゃんの舌が私の舌を弄び、吸い上げる。
私は混乱と呼吸困難で、裕ちゃんにしがみつくしかできない。