極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
長いキスのあと、裕ちゃんは顔を離す。腰が砕け、立っていられなくなった私を抱きしめたまま。
はりついた胸から、私のうるさい鼓動が裕ちゃんに伝わってしまう。
「これでどうだ」
低い声にハッとして、まばたきした。
健ちゃんが、呆然とこちらを見ていた。
「羅良にも希樹にも長く会ってないくせに、適当なことを言って嫌がらせをした罪は重い。もし両親にその憶測を話し、これ以上こいつを傷つけることがあったら、お前のサボり癖を全部暴露してやるからな」
「えっ! それは困るよ!」
弱り切った表情の健ちゃんに、裕ちゃんはたたみかける。
「金輪際、俺がいないときに訪問するのはやめてもらおう。わかったな」
裕ちゃんは私の肩を抱き、マンションの中に入る。
自動ドアが閉まる瞬間、健ちゃんの不満そうな顔が見えた。
「……ちぇ」
小さな舌打ちが聞こえたと同時、外の世界から遮断された。
私は裕ちゃんに誘導されるまま、無言でエレベーターに乗り込む。
ふたりきりになると、さっきのキスが脳裏によみがえってくる。
考えるのをやめても、何度も何度もよみがえる。
その度に顔と体が燃え上がるように熱くなる。知らなかった感覚に痺れ、指先までジンジンする。