極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
夜空の下で
高校生のときの夢を見た。
裕ちゃんと羅良が付き合いはじめたのをきっかけに、両家がふたりを婚約させた頃の夢だ。
羅良は、あの頃から私が裕ちゃんを好いていたことを、私自身より先に認識していたのだろう。
今、こんな風に裕ちゃんを裏切るくらいなら、どうして最初から彼と付き合ったりしたのか。
彼が羅良のものになってから、私はますます走る以外のことを視界から押し出すようになった。
裕ちゃんを好きだったと、認めたくなかった。
陸上に打ち込むことで、他のことを忘れようとして、そしてそれは見事に成功していたはずだったのに。
「どうして今さらそんなこと言うのよ……」
羅良の言葉がカギとなって、心の封印を解かれてしまったようだ。
私は露骨に裕ちゃんのことを意識してしまう。
ごそごそと手を伸ばし、枕元のスマホをつかむ。
時間を見ると、アラームが鳴る直前だった。少し損したような気分で、まぶたをこすると。
「うっ、は……!」
裕ちゃんの寝顔が、目の前に落ちていた。
そりゃあそうだ。毎日添い寝しているんだもの。
いつもはアラームと同時に一緒に起きてしまうことが多いから、寝顔を見たのは初めて。
目を閉じていると、まつ毛の長さが際立つ。まるで少年のような寝顔に、胸の奥をわしづかみにされる。
か、可愛いがすぎる……!