極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
もっと強気で、どこでどうしているのか聞いて、連れ戻さなきゃいけなかったのに。
「希樹が謝る必要はないよ。失踪の理由は聞いた? 他の男と一緒にいるとか」
背中が凍り付くような気がした。
考えたくなかったけど、羅良が浮気していて、他の男の人のところに逃げている可能性もあるんだ。
「そうは、言っていなかったよ。ただ、自由が欲しいんだって」
答える声が震えた。
「そう。うん、結婚って相手を縛る行為だもんな」
怒りも嘆きもせず、裕ちゃんはコーヒーをすすった。
「あいつはずっと、自由になりたかったのかもな。子供の頃から親の期待に応えようと、頑張ってきたから」
「私がポンコツだったから、羅良に負担をかけていたんだね……」
羅良が私の想いを知りながら裕ちゃんと付き合ったのは、ひそかな復讐だったのかもしれない。
ふとそんなことを思ったけど、ただの推測だ。考えすぎるのはやめた。
「希樹のせいじゃない。ご両親のせいでもない。みんな、それが相手のためになると思ってやっていただけだ」
「私はずっと自由だった」
「そうかな。羅良だけが可愛がられているって、思いこんでいなかった? 自由にしていると見せかけて、希樹だって、何かに縛られたり遠慮していたんだと思うよ。俺は」