極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
帰ってくる見込みのない羅良を待ち続けるより、他の相手を見つけて幸せになってほしい。彼の家族だって、そう願うだろう。
「ねえ、裕ちゃん」
羅良の代わりに、私じゃダメかな。
話し方も仕草も性格も、何もかもが違う。似ているのは、外見と声だけだけど。
「ん?」
「ううん、なんでもない」
姉の代わりに私をもらってください。
なんて、言えるわけがなかった。
口を閉ざしてしまった私の代わりに、食後のコーヒーも飲み終えた裕ちゃんが話す。
「そうだ、希樹。ふたりで出かけようか」
「え?」
「両親や健太郎に邪魔されて、ストレスが溜まっているだろ。たまには自宅を離れた場所でリフレッシュしないか」
「あ、うん! 行く!」
私はうなずく。裕ちゃんは微笑み、スマホをいじりはじめた。
行先を検索しているのだろう。
邪魔をしないよう、私はできるだけ音を立てないように食器を洗った。