愛しい女(ヒト)
「郁哉さん こんばんは。
何か軽く食べさせてもらえますか?」


「めずらしいね こんな時間に。」


「今日は残業だったんです。
今から帰って夕飯作る気になれなくて来ちゃいました。」


郁哉に笑顔で話をしている彼女を俺は固まったまま見ていた。


そんな俺に気づいた郁哉。

何か察したようで、俺が座っている席の一つあけた隣の席に彼女を座らせた。

せっかく郁哉が気を使ってくれたチャンスを逃したくない俺は………

「こんばんは。」

すぐ彼女に話しかけた。

急に話しかけられた彼女は、一瞬ビクッとして、ゆっくり俺の方に視線を向けた。

俺を見て「あっ!」という顔をしてくれたのを見て、覚えててくれたんだと嬉しくなった。

「こんばんは。N社の藤倉さんですよね?」


「良かった。覚えててくれたんだね。」


「藤倉さんはうちの会社で有名人ですから。」


「香保ちゃんの会社で?こいつなんかしたの?」


すかさず口をはさむ郁哉を俺はにらむ。
せっかく彼女と話ができるチャンスなのに邪魔するな!………と………
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