幸せな結末
「俺が留守の間、何もなかった?」
夜になり朝陽と理恵は二人で一緒にベッドに入り話していた。
「うん。」
理恵は自分が救急車で運ばれたことも、緊急手術をしたことも朝陽には黙っている。
幸い手術とはいってもお腹に傷はついていない。

「朝陽は?学会どうだった?」
「すごい、新鮮だったよ。毎日慌ただしくしてるとさ、自分の世界がどんどん狭くなるだろ?」
「うん。」
「その世界がすごい広がった。」
目を輝かせながら話す朝陽に理恵も微笑んだ。
「ずっと一人だったの?今回の出張。」
「いや、後半は高沢が来た。」
その名前に理恵が朝陽をちらりと見る。
「・・・そうなんだ。高沢さんてどんな人なの?」
「高沢?俺の大学からの後輩でさ。ゼミが一緒だったんだ。頭がよくて手先も器用。外科医に向いてるな。」
「そうなんだ。きれいな人だよね。」
「まぁな」
理恵は裕子の話をする朝陽の表情が気になっていた。
< 133 / 280 >

この作品をシェア

pagetop