幸せな結末
何年もこの先治療していくことはできるだろうか。
私の治療の先にはどんな未来が待っているのだろうか。
たくさんの結末を見てきた理恵には不安しかなかった。
「和田さん」
「はい」
理恵に、医師が真剣なまなざしで話しかける。
「今すぐに妊娠に向けての服薬を開始することもできます。私たちができるのはたった一度の人生の中で、和田さんとご主人が後悔しないようにサポートすることです。」
「・・・はい」
「ただ、現在の体の状態で妊娠した時のリスクはいまお話ししました。」
「はい」
「それでもご希望されるならば私たちはサポートしますよ。」
妊活・・・。医師の言葉に理恵は涙が出そうだった。
「妊活とは言われても、生命の芽吹きや誕生はまだまだ医師の力では及ばない部分が多いんです。悔しい話ですが。だからこそ、後悔しないようにご夫婦で歩んでいただきたい。結果はどうであれ、その過程を選択することはできますから。」
医師は優しく微笑んだ。
理恵はこの先生ならば長く一緒に歩めそうだと感じていた。
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