【シナリオ】溺愛社長の2度目の恋
第10話 有史さん抜きで旅行?
○SE社長室
檜垣「俺が夏音ちゃんを狙っても問題ないよな?」
と、ニヤリと笑う。
夏音「え?」
夏音、理解ができず檜垣の顔をまじまじと見つめる。
夏音「それってどういう……」
天倉「ごめんごめん」
夏音が口を開きかけたとき、天倉が社長室に戻ってくる。
天倉「ん? どうかした?」
檜垣「なんでもないよ。なあ、夏音ちゃん」
夏音「はぁ……」
檜垣にウィンクされ、渋々夏音、同意する。
天倉「そう? 少し早いけどそろそろ出る? 夏音も檜垣の他の店も見ていたいだろ」
夏音「そうですね」
と、テーブルの上を片付け出す。
檜垣「コンセプトが違うから、参考にはならないと思うけどなー」
夏音「そんなことはないですよ。檜垣さんが根本的に求めているものとかわかりますし」
檜垣「やっぱりいいな、夏音ちゃんは」
檜垣、ニヤリと笑う。
一瞬だけ嫌そうな顔をする天倉。
○レストラン スリール・ドゥ・デエス(夜)
黒と紺を基調とした高級感のある店内。
照明はほとんどが間接照明で落ち着いている。
グランドピアノの生演奏が高級感を盛り上げる。
店に一歩入ると同時に、支配人男性(35)が出迎える。
支配人「檜垣オーナー」
檜垣「よう。今日はうまいもん、食べさせてくれよ。大事な人を連れてきているんだから」
支配人「はい。芳村もひさしぶりにオーナーに食べていただけると張り切っています」
檜垣「期待しているぞ」
夏音「素敵なお店ですね……」
周りを見渡しながら、支配人に引かれた椅子に夏音、腰掛ける。
檜垣「夏音ちゃんにそう言ってもらえるなんて光栄だ」
と、夏音に向かってウィンクする。
ぽっ、と顔を僅かに絡める夏音。
天倉が一瞬だけ、不快そうに顔をしかめる。
檜垣「カド・ドゥ・ディユのほうはカジュアルフレンチにしようと思ってるんだが、こっちは本格。当然、値段も」
夏音「うわっ」
メニューを見て驚きの声を上げた夏音、不躾だったとすぐに肩を小さく丸める。
天倉と檜垣、そんな夏音をくすりと笑う。
が、同じことを考えていたと知り、ふたりが顔を背ける。
檜垣「値段に釣り合うように、内装もそれに合わせた。そしてこっちは天倉さんのデザイン」
夏音「有史さんの?」
と、周りを改めて見渡す。
夏音「素敵です」
天倉「……ありがとう」
と、少し恥ずかしそうにする。
檜垣「カドはもっと気軽にフレンチを楽しめる店にしたいんだ。だから店内も明るい感じで可愛らしく」
夏音「了解です」
と、すでにアイディアを練りはじめている。
食前酒のシャンパンが運ばれてくる。
天倉が瓶を掴むより早く檜垣が瓶を取り、夏音のグラスに注ぐ。
天倉、空振りした手を軽く握りしめ、それを黙って見ている。
檜垣は天倉のグラスに注ぎ、そのまま自分のグラスにも注ぐ。
檜垣「新しい店の出来映えを祈って。……乾杯」
夏音・天倉「乾杯」
料理が出てきて三人、食べ始める。
檜垣「夏音ちゃんは天倉さんの会社に来る前、どこで働いてたの」
夏音「コサイデザインです」
檜垣「あそこって少し前、デザイナーとか一気に何人も辞めたって聞いてるけど……」
夏音「は、ははは……」
と、笑って誤魔化す。
天倉、ふたりの話を黙って聞いている。
檜垣「……夏音ちゃんもそのひとり?」
夏音「……はい。というか、きっかけを作った張本人?」
檜垣「なにそれ、聞かせて、聞かせて」
檜垣、夏音の方へ身を乗り出してくる。
夏音「ええーっとですね……」
半ば仕方なく夏音、部長のセクハラにキレて売り言葉に買い言葉で辞めたことを話す。
檜垣「なにそれ、最高だな……!」
ゲラゲラ笑う檜垣に、少し不満そうな夏音。
夏音「そこまで笑わなくったって……」
天倉「そうだよ、檜垣。笑いすぎだよ」
夏音「って! 有史さんだって聞いたとき、これくらい笑ってましたよ!」
天倉「そうだっけ?」
と、とぼけてみせる。
檜垣「なんか天倉さんが、偽装とはいえ再婚相手に夏音ちゃんを選んだ理由がわかるわー」
夏音「……酷いです」
夏音、ふて腐れる。
○タクシー車内(夜)
食事が終わり、タクシーに乗り込む三人。
夏音を挟んで天倉と檜垣が座る。
檜垣「なあ、天倉さん。確認するけどさ」
天倉「なに?」
檜垣「夏音ちゃんとは偽装結婚で、そこに愛だの恋だのないんだよな?」
天倉「君、なにげによくそんな恥ずかしいこと言えるね」
檜垣「いいから」
天倉「ないよ。夏音に人としての好意はあるが、恋人や妻としての愛はない」
夏音「……!」
夏音、傷ついた顔で俯き、唇を噛む。
檜垣「ならさ、俺が夏音ちゃんを狙ったって問題ないわけだ」
天倉「……。ないよ、別に。夏音に好きな人ができれば解消する契約になっているし。……ただし」
言葉を切り、天倉が檜垣を睨みつける。
天倉「夏音を不幸にするような奴には絶対、渡せないけどね」
夏音を挟んで天倉と檜垣、にらみ合う。
夏音、ふたりの間でおろおろするだけ。
檜垣「おおこわっ。保護者のつもり? まあいいや、これからはガンガン攻めさせてもらうからね、夏音ちゃん?」
にぱっと笑った檜垣、夏音の顔をのぞき込む。
夏音「えっ、あっ……」
と、曖昧に笑う。
天倉、無表情に窓の外を見ている。
檜垣の泊まるホテルの前で彼を降ろし、タクシーは再び走りだす。
天倉「さっきの話だけどさ」
天倉、窓の外を見たまま夏音の方を見ない。
夏音「……はい」
夏音はじっと俯いて、自分の手を見ている。
天倉「檜垣を好きになったときはいつでも言って。僕はこの関係にいつまでも夏音を縛り付けておく気はないから」
夏音「……はい」
夏音、気づかれないように涙の浮かんだ目尻を拭う。
夏音M「有史さんが私を好きになってくれないなんってわかっていたことなのに。なんでいま、こんなに傷ついているんだろう……?」
○SEオフィス
いつも通り仕事をしている夏音。
檜垣「よっ! 夏音ちゃん!」
夏音「うわっ」
いきなり後ろから現れた檜垣に肩を叩かれ、驚く夏音。
夏音、おそるおそる後ろを振り向き、檜垣だとわかってほっとする。
夏音「どうしたんですか? しばらくは九州だって聞いていたのに」
檜垣「んー、使う食器でトラブって、ついでに他の用事も済ませてしまおうってしばらくこっち」
夏音「そうなんですか」
檜垣「メシ行こうぜ、メシ。……天倉さん、夏音ちゃん借りるぞー」
と、通りかかった天倉へ声をかける。
天倉「……ああ」
夏音と目のあった天倉が視線を逸らす。
夏音、俯いてつらそうな顔をする。
檜垣「さ、行こうぜ、夏音ちゃん!」
夏音「えっ、うわっ!?」
強引に檜垣に立たされ、苦笑いで夏音、ついていく。
前に天倉から連れ来られたカフェに檜垣とふたりで入る夏音。
檜垣「今日のサンドイッチランチはローストビーフか。夏音ちゃんもそれでいい?」
夏音「はい」
檜垣、店員を呼んで注文。
夏音N「檜垣さんは全国でレストラン展開していて、日本中を忙しく飛び回っている。有史さんとタイプは違うけど、イケメンの実業家。絶対、モテると思うけれど、なんでいままで結婚してないかは謎」
檜垣「九州の店、現地のデザイナーに依頼したんだけど、なんか上手くこっちの要望が伝わらなくてさー。夏音ちゃんに頼めばよかったって後悔してる」
夏音「いや、そんな……」
と、謙遜する。
檜垣「いや、ほんとほんと。カドができあがるのが楽しみだな。……おっ、きたきた」
料理が届き、ふたり食べはじめる。
夏音N「カドの建築は順調で、もうすぐ棟上げだ。どうなるのかドキドキする」
檜垣「そうだ、棟上げには夏音ちゃんも来ないか? 天倉さん抜きで」
夏音「え?」
檜垣「うん、それがいい。戻ったら速攻で天倉さんに話そう」
夏音「え? ええっ?」
と、困惑。
夏音M「そ、それってなんか、マズくないー!?」
檜垣「俺が夏音ちゃんを狙っても問題ないよな?」
と、ニヤリと笑う。
夏音「え?」
夏音、理解ができず檜垣の顔をまじまじと見つめる。
夏音「それってどういう……」
天倉「ごめんごめん」
夏音が口を開きかけたとき、天倉が社長室に戻ってくる。
天倉「ん? どうかした?」
檜垣「なんでもないよ。なあ、夏音ちゃん」
夏音「はぁ……」
檜垣にウィンクされ、渋々夏音、同意する。
天倉「そう? 少し早いけどそろそろ出る? 夏音も檜垣の他の店も見ていたいだろ」
夏音「そうですね」
と、テーブルの上を片付け出す。
檜垣「コンセプトが違うから、参考にはならないと思うけどなー」
夏音「そんなことはないですよ。檜垣さんが根本的に求めているものとかわかりますし」
檜垣「やっぱりいいな、夏音ちゃんは」
檜垣、ニヤリと笑う。
一瞬だけ嫌そうな顔をする天倉。
○レストラン スリール・ドゥ・デエス(夜)
黒と紺を基調とした高級感のある店内。
照明はほとんどが間接照明で落ち着いている。
グランドピアノの生演奏が高級感を盛り上げる。
店に一歩入ると同時に、支配人男性(35)が出迎える。
支配人「檜垣オーナー」
檜垣「よう。今日はうまいもん、食べさせてくれよ。大事な人を連れてきているんだから」
支配人「はい。芳村もひさしぶりにオーナーに食べていただけると張り切っています」
檜垣「期待しているぞ」
夏音「素敵なお店ですね……」
周りを見渡しながら、支配人に引かれた椅子に夏音、腰掛ける。
檜垣「夏音ちゃんにそう言ってもらえるなんて光栄だ」
と、夏音に向かってウィンクする。
ぽっ、と顔を僅かに絡める夏音。
天倉が一瞬だけ、不快そうに顔をしかめる。
檜垣「カド・ドゥ・ディユのほうはカジュアルフレンチにしようと思ってるんだが、こっちは本格。当然、値段も」
夏音「うわっ」
メニューを見て驚きの声を上げた夏音、不躾だったとすぐに肩を小さく丸める。
天倉と檜垣、そんな夏音をくすりと笑う。
が、同じことを考えていたと知り、ふたりが顔を背ける。
檜垣「値段に釣り合うように、内装もそれに合わせた。そしてこっちは天倉さんのデザイン」
夏音「有史さんの?」
と、周りを改めて見渡す。
夏音「素敵です」
天倉「……ありがとう」
と、少し恥ずかしそうにする。
檜垣「カドはもっと気軽にフレンチを楽しめる店にしたいんだ。だから店内も明るい感じで可愛らしく」
夏音「了解です」
と、すでにアイディアを練りはじめている。
食前酒のシャンパンが運ばれてくる。
天倉が瓶を掴むより早く檜垣が瓶を取り、夏音のグラスに注ぐ。
天倉、空振りした手を軽く握りしめ、それを黙って見ている。
檜垣は天倉のグラスに注ぎ、そのまま自分のグラスにも注ぐ。
檜垣「新しい店の出来映えを祈って。……乾杯」
夏音・天倉「乾杯」
料理が出てきて三人、食べ始める。
檜垣「夏音ちゃんは天倉さんの会社に来る前、どこで働いてたの」
夏音「コサイデザインです」
檜垣「あそこって少し前、デザイナーとか一気に何人も辞めたって聞いてるけど……」
夏音「は、ははは……」
と、笑って誤魔化す。
天倉、ふたりの話を黙って聞いている。
檜垣「……夏音ちゃんもそのひとり?」
夏音「……はい。というか、きっかけを作った張本人?」
檜垣「なにそれ、聞かせて、聞かせて」
檜垣、夏音の方へ身を乗り出してくる。
夏音「ええーっとですね……」
半ば仕方なく夏音、部長のセクハラにキレて売り言葉に買い言葉で辞めたことを話す。
檜垣「なにそれ、最高だな……!」
ゲラゲラ笑う檜垣に、少し不満そうな夏音。
夏音「そこまで笑わなくったって……」
天倉「そうだよ、檜垣。笑いすぎだよ」
夏音「って! 有史さんだって聞いたとき、これくらい笑ってましたよ!」
天倉「そうだっけ?」
と、とぼけてみせる。
檜垣「なんか天倉さんが、偽装とはいえ再婚相手に夏音ちゃんを選んだ理由がわかるわー」
夏音「……酷いです」
夏音、ふて腐れる。
○タクシー車内(夜)
食事が終わり、タクシーに乗り込む三人。
夏音を挟んで天倉と檜垣が座る。
檜垣「なあ、天倉さん。確認するけどさ」
天倉「なに?」
檜垣「夏音ちゃんとは偽装結婚で、そこに愛だの恋だのないんだよな?」
天倉「君、なにげによくそんな恥ずかしいこと言えるね」
檜垣「いいから」
天倉「ないよ。夏音に人としての好意はあるが、恋人や妻としての愛はない」
夏音「……!」
夏音、傷ついた顔で俯き、唇を噛む。
檜垣「ならさ、俺が夏音ちゃんを狙ったって問題ないわけだ」
天倉「……。ないよ、別に。夏音に好きな人ができれば解消する契約になっているし。……ただし」
言葉を切り、天倉が檜垣を睨みつける。
天倉「夏音を不幸にするような奴には絶対、渡せないけどね」
夏音を挟んで天倉と檜垣、にらみ合う。
夏音、ふたりの間でおろおろするだけ。
檜垣「おおこわっ。保護者のつもり? まあいいや、これからはガンガン攻めさせてもらうからね、夏音ちゃん?」
にぱっと笑った檜垣、夏音の顔をのぞき込む。
夏音「えっ、あっ……」
と、曖昧に笑う。
天倉、無表情に窓の外を見ている。
檜垣の泊まるホテルの前で彼を降ろし、タクシーは再び走りだす。
天倉「さっきの話だけどさ」
天倉、窓の外を見たまま夏音の方を見ない。
夏音「……はい」
夏音はじっと俯いて、自分の手を見ている。
天倉「檜垣を好きになったときはいつでも言って。僕はこの関係にいつまでも夏音を縛り付けておく気はないから」
夏音「……はい」
夏音、気づかれないように涙の浮かんだ目尻を拭う。
夏音M「有史さんが私を好きになってくれないなんってわかっていたことなのに。なんでいま、こんなに傷ついているんだろう……?」
○SEオフィス
いつも通り仕事をしている夏音。
檜垣「よっ! 夏音ちゃん!」
夏音「うわっ」
いきなり後ろから現れた檜垣に肩を叩かれ、驚く夏音。
夏音、おそるおそる後ろを振り向き、檜垣だとわかってほっとする。
夏音「どうしたんですか? しばらくは九州だって聞いていたのに」
檜垣「んー、使う食器でトラブって、ついでに他の用事も済ませてしまおうってしばらくこっち」
夏音「そうなんですか」
檜垣「メシ行こうぜ、メシ。……天倉さん、夏音ちゃん借りるぞー」
と、通りかかった天倉へ声をかける。
天倉「……ああ」
夏音と目のあった天倉が視線を逸らす。
夏音、俯いてつらそうな顔をする。
檜垣「さ、行こうぜ、夏音ちゃん!」
夏音「えっ、うわっ!?」
強引に檜垣に立たされ、苦笑いで夏音、ついていく。
前に天倉から連れ来られたカフェに檜垣とふたりで入る夏音。
檜垣「今日のサンドイッチランチはローストビーフか。夏音ちゃんもそれでいい?」
夏音「はい」
檜垣、店員を呼んで注文。
夏音N「檜垣さんは全国でレストラン展開していて、日本中を忙しく飛び回っている。有史さんとタイプは違うけど、イケメンの実業家。絶対、モテると思うけれど、なんでいままで結婚してないかは謎」
檜垣「九州の店、現地のデザイナーに依頼したんだけど、なんか上手くこっちの要望が伝わらなくてさー。夏音ちゃんに頼めばよかったって後悔してる」
夏音「いや、そんな……」
と、謙遜する。
檜垣「いや、ほんとほんと。カドができあがるのが楽しみだな。……おっ、きたきた」
料理が届き、ふたり食べはじめる。
夏音N「カドの建築は順調で、もうすぐ棟上げだ。どうなるのかドキドキする」
檜垣「そうだ、棟上げには夏音ちゃんも来ないか? 天倉さん抜きで」
夏音「え?」
檜垣「うん、それがいい。戻ったら速攻で天倉さんに話そう」
夏音「え? ええっ?」
と、困惑。
夏音M「そ、それってなんか、マズくないー!?」