【シナリオ】溺愛社長の2度目の恋
第16話 有史さんが拉致されました
○天倉実家(夜)
あきらかに一般住宅ではない、重厚な和建築の門が開き、その中へと天倉が車を進めていく。
見えてきたのは旅館かと思うほどの和風の大きな建物。
玄関前ロータリーで車を停め、天倉は使用人にキーを預けている。
夏音M「大きい……」
天倉「夏音、こっちだよ」
夏音「あ、はい」
ぼーっと見渡していた夏音、慌てて天倉の後に続く。
玄関だけですでに夏音が以前住んでいたアパートの一室ほどありそうな広さ。
千寿子「有史さん!」
和服姿の千寿子、奥から駆けてくる。
千寿子「さあさあこちらへ。お食事はもうなさったの?」
天倉を家の中へ導きながら、背後の夏音をじろりと睨む。
天倉「夏音、おいで」
振り向いた天倉、腕を開いて夏音を呼ぶ。
夏音、ぱっと笑ってその中に駆け寄る。
千寿子、苦々しげにそれを見ている。
通された応接室には父親の和之(67)が待っている。
和之「有史……と、そちらの方は?」
天倉「僕の妻の夏音です」
和之「もう離婚したんだと聞いたんだがな」
座るように促され、夏音と天倉が並んで座る。
千寿子も和之の隣に座る。
すぐにお手伝いさんがお茶の準備をしてくる。
千寿子「そうですよ! やっと親の言うことを聞く気になってくれたと思ったのに!」
と、ヒステリックに叫ぶ。
天倉「誰から聞いたのか知りませんが、離婚なんてしてませんよ。……まあ、いろいろありましたが」
と、口を濁す。
千寿子「なら、すぐに離婚なさい! そうしなさい!」
バン!と、千寿子が興奮して机を叩く。
天倉「僕は! 絶対に夏音と離婚したりしません! いい加減、子供に干渉するのはやめてください!」
夏音は天倉と千寿子のやりとりをおろおろと見ているだけ。
和之「まあ、落ち着かないか」
いままで静観していた和之が口を開く。
和之「離婚だとか結婚だとか、そう軽々しくするもんじゃない。それに私は跡取りだとか、どうでもいい」
千寿子「あなた!」
ヒステリックに叫んだ千寿子が和之を睨む。
和之は少しだけ肩をすくめてみせる。
和之「でも千寿子がどうしてもと言うからな。少しくらい考えてやってくれると嬉しい」
天倉「考えられることとられないことがあるんですよ……」
と、ため息をつく。
和之「そこのお嬢さん」
夏音「は、はい!」
急に自分に声をかけられ夏音、慌てて返事をする。
和之「天倉は戦前から続く名家です。経営する会社も日本を代表するような会社だ。そんな家の嫁取りとなれば、そうそう簡単にいかないのはわかりますね?」
夏音「……はい」
と、俯いて唇を噛む。
和之「私は深里さんとの結婚を認めたことを後悔しています。そしてまた、後悔したくない」
夏音「……はい」
夏音、鼻をずっと啜る。
和之「だから貴方も、有史も。もう一度よく、考えなさい」
夏音「……はい」
天倉「……」
○天倉家(夜)
並んでソファーに座り、意気消沈している夏音の肩を天倉が抱く。
天倉「気にすることないよ。僕はもう、夏音と別れるのは嫌だからね」
夏音「……でも」
天倉「夏音!」
天倉が夏音の顔を手で挟み、上を向かせる。
天倉「僕がいま愛しているのは夏音だけだ。夏音と別れて他の誰かと結婚なんて考えられない」
驚いてただ天倉を見つめている夏音。
天倉「夏音が愛しているのも僕だけだろ?」
じっと、眼鏡の奥から夏音を見つめる天倉。
夏音「……はい」
天倉「うん、いい子だ」
優しく笑った天倉が夏音に口付けする。
離れてもじっと見つめたままの天倉。
夏音も見つめ返す。
また口付けし、天倉はもどかしそうに何度も口付けを繰り返す。
耐えきれなくなって吐息を漏らした夏音の中へ侵入し、夏音と天倉が深い口付けをかわす。
夏音「……はぁーっ」
ようやく天倉が離れ、息を吐き出す夏音。
見上げると、天倉が熱を孕んだ瞳で見ている。
次第に天倉の顔が近づいてきて、夏音の耳もとで囁く。
天倉「……ね。抱いて、いい?」
夏音、真っ赤な顔で頷く。
寝室のベッドで天倉が夏音を押し倒す。
夏音M「あ、そっか。初めてじゃ、ないんだ……」
フラッシュ
***
裸で目が覚め、隣に裸で寝ている檜垣。
シャワーを浴びながら、首筋に見つけたキスマーク。
***
夏音「痛い、痛い、痛い、痛いーっ!」
天倉「え?」
動きを止め、心配そうに夏音の顔をのぞき込む。
夏音「に、二回目も痛いんですか……?」
夏音、涙目で天倉を見上げる。
天倉「多少は痛いかもだけど、こんなに……」
天倉は少し考えている。
天倉「……もしかして、檜垣に担がれていたのかも」
夏音「え?」
天倉「とにかく。夏音は今日が初めてだってこと。ごめんね、知らなくて。いまからじゃ遅いけど、うんと優しくするから」
夏音「え? え?」
天倉、訳のわかっていない夏音を再び押し倒す。
○天倉家(朝)
天倉のベッドで眠っている夏音。
夏音「う、うーん……」
寝返りを打った夏音、ぱちっと目を開ける。
天倉「おはよう、夏音」
視界に眼鏡をかけた天倉を認め、夏音がみるみるうちに赤くなっていく。
夏音「お、おは、……おはようござい……マス」
夏音M「ううっ。どんな顔していいのかわかんない……」
天倉「身体、つらくない? シャワー浴びておいで。その間に朝食の準備をしておくから」
ベッドから出て天倉が落ちていたバスローブを羽織る。
夏音「は、はい……」
くすりと天倉は笑い、夏音のあたまをぽんぽんして部屋を出ていく。
夏音「は、恥ずかしい……」
真っ赤になった顔を両手で隠し、夏音が蹲る。
しばらくして落ち着き、吹っ切るように顔を上げてバスローブを羽織って部屋を出て浴室へ向かう。
キッチンでは天倉が朝食の準備をしている。
シャワーを浴びる夏音。
夏音「そうか、有史さんが初めてだったんだ」
と、にやける。
夏音「檜垣さんも酷いよね、騙すとか。あ、でも、勘違いしてたのは私だけど」
夏音、はぁーとため息をつく。
鏡に映った自分を見て、そこかしこについたキスマークに気づく。
夏音「檜垣さんのときは嫌だったのに、有史さんだと嬉しいのはやっぱり好きだからかな?」
夏音がシャワーを済ませると、ダイニングテーブルの上には朝食が並んでいる。
天倉「じゃあ食べようか」
夏音・天倉「いただきます」
朝食を食べるふたり。
天倉「今日は深里の部屋を片付けようと思うんだ。手伝ってくれるかい?」
夏音「え?」
箸を止め、夏音がまじまじと天倉を見つめる。
天倉はなんでもないように食事を続けている。
天倉「いつまでもあのままじゃいけないだろ。さすがに仏壇を片付けたりまではしないけど、部屋はもう片付けなくちゃ」
夏音「いいんですか」
天倉「僕はもう、残りの人生は夏音と生きていくって決めたからね」
少し赤い顔で天倉が眼鏡をあげる。
夏音も照れて俯く。
ふたりで朝食の後片付けをしていると、ピンポーンとインターフォンが鳴る。
天倉「はーい。……母さん?」
画面を見た天倉、怪訝そうに眉をひそめる。
玄関へ行く天倉のあとを夏音も着いていく。
天倉「母さん、なんの用ですか?」
千寿子「有史さん、お見合いに行きますよ」
天倉「ちょ、ちょっと!」
千寿子、強引に天倉の手を引っ張る。
千寿子「昨日、承知してくださったでしょ」
天倉「あれのどこを取ったら承知したことになるんですか!」
夏音「あ……」
使用人の男が千寿子に命じられて天倉の手を掴み、強引に引きずっていく。
千寿子「さあさ、行きましょう」
天倉「ちょっと待ってください! 夏音!」
抵抗むなしく、天倉は車に押し込められ、そのまま千寿子一行を乗せた車は走り去ってしまう。
夏音「え、ええーっ!」
あきらかに一般住宅ではない、重厚な和建築の門が開き、その中へと天倉が車を進めていく。
見えてきたのは旅館かと思うほどの和風の大きな建物。
玄関前ロータリーで車を停め、天倉は使用人にキーを預けている。
夏音M「大きい……」
天倉「夏音、こっちだよ」
夏音「あ、はい」
ぼーっと見渡していた夏音、慌てて天倉の後に続く。
玄関だけですでに夏音が以前住んでいたアパートの一室ほどありそうな広さ。
千寿子「有史さん!」
和服姿の千寿子、奥から駆けてくる。
千寿子「さあさあこちらへ。お食事はもうなさったの?」
天倉を家の中へ導きながら、背後の夏音をじろりと睨む。
天倉「夏音、おいで」
振り向いた天倉、腕を開いて夏音を呼ぶ。
夏音、ぱっと笑ってその中に駆け寄る。
千寿子、苦々しげにそれを見ている。
通された応接室には父親の和之(67)が待っている。
和之「有史……と、そちらの方は?」
天倉「僕の妻の夏音です」
和之「もう離婚したんだと聞いたんだがな」
座るように促され、夏音と天倉が並んで座る。
千寿子も和之の隣に座る。
すぐにお手伝いさんがお茶の準備をしてくる。
千寿子「そうですよ! やっと親の言うことを聞く気になってくれたと思ったのに!」
と、ヒステリックに叫ぶ。
天倉「誰から聞いたのか知りませんが、離婚なんてしてませんよ。……まあ、いろいろありましたが」
と、口を濁す。
千寿子「なら、すぐに離婚なさい! そうしなさい!」
バン!と、千寿子が興奮して机を叩く。
天倉「僕は! 絶対に夏音と離婚したりしません! いい加減、子供に干渉するのはやめてください!」
夏音は天倉と千寿子のやりとりをおろおろと見ているだけ。
和之「まあ、落ち着かないか」
いままで静観していた和之が口を開く。
和之「離婚だとか結婚だとか、そう軽々しくするもんじゃない。それに私は跡取りだとか、どうでもいい」
千寿子「あなた!」
ヒステリックに叫んだ千寿子が和之を睨む。
和之は少しだけ肩をすくめてみせる。
和之「でも千寿子がどうしてもと言うからな。少しくらい考えてやってくれると嬉しい」
天倉「考えられることとられないことがあるんですよ……」
と、ため息をつく。
和之「そこのお嬢さん」
夏音「は、はい!」
急に自分に声をかけられ夏音、慌てて返事をする。
和之「天倉は戦前から続く名家です。経営する会社も日本を代表するような会社だ。そんな家の嫁取りとなれば、そうそう簡単にいかないのはわかりますね?」
夏音「……はい」
と、俯いて唇を噛む。
和之「私は深里さんとの結婚を認めたことを後悔しています。そしてまた、後悔したくない」
夏音「……はい」
夏音、鼻をずっと啜る。
和之「だから貴方も、有史も。もう一度よく、考えなさい」
夏音「……はい」
天倉「……」
○天倉家(夜)
並んでソファーに座り、意気消沈している夏音の肩を天倉が抱く。
天倉「気にすることないよ。僕はもう、夏音と別れるのは嫌だからね」
夏音「……でも」
天倉「夏音!」
天倉が夏音の顔を手で挟み、上を向かせる。
天倉「僕がいま愛しているのは夏音だけだ。夏音と別れて他の誰かと結婚なんて考えられない」
驚いてただ天倉を見つめている夏音。
天倉「夏音が愛しているのも僕だけだろ?」
じっと、眼鏡の奥から夏音を見つめる天倉。
夏音「……はい」
天倉「うん、いい子だ」
優しく笑った天倉が夏音に口付けする。
離れてもじっと見つめたままの天倉。
夏音も見つめ返す。
また口付けし、天倉はもどかしそうに何度も口付けを繰り返す。
耐えきれなくなって吐息を漏らした夏音の中へ侵入し、夏音と天倉が深い口付けをかわす。
夏音「……はぁーっ」
ようやく天倉が離れ、息を吐き出す夏音。
見上げると、天倉が熱を孕んだ瞳で見ている。
次第に天倉の顔が近づいてきて、夏音の耳もとで囁く。
天倉「……ね。抱いて、いい?」
夏音、真っ赤な顔で頷く。
寝室のベッドで天倉が夏音を押し倒す。
夏音M「あ、そっか。初めてじゃ、ないんだ……」
フラッシュ
***
裸で目が覚め、隣に裸で寝ている檜垣。
シャワーを浴びながら、首筋に見つけたキスマーク。
***
夏音「痛い、痛い、痛い、痛いーっ!」
天倉「え?」
動きを止め、心配そうに夏音の顔をのぞき込む。
夏音「に、二回目も痛いんですか……?」
夏音、涙目で天倉を見上げる。
天倉「多少は痛いかもだけど、こんなに……」
天倉は少し考えている。
天倉「……もしかして、檜垣に担がれていたのかも」
夏音「え?」
天倉「とにかく。夏音は今日が初めてだってこと。ごめんね、知らなくて。いまからじゃ遅いけど、うんと優しくするから」
夏音「え? え?」
天倉、訳のわかっていない夏音を再び押し倒す。
○天倉家(朝)
天倉のベッドで眠っている夏音。
夏音「う、うーん……」
寝返りを打った夏音、ぱちっと目を開ける。
天倉「おはよう、夏音」
視界に眼鏡をかけた天倉を認め、夏音がみるみるうちに赤くなっていく。
夏音「お、おは、……おはようござい……マス」
夏音M「ううっ。どんな顔していいのかわかんない……」
天倉「身体、つらくない? シャワー浴びておいで。その間に朝食の準備をしておくから」
ベッドから出て天倉が落ちていたバスローブを羽織る。
夏音「は、はい……」
くすりと天倉は笑い、夏音のあたまをぽんぽんして部屋を出ていく。
夏音「は、恥ずかしい……」
真っ赤になった顔を両手で隠し、夏音が蹲る。
しばらくして落ち着き、吹っ切るように顔を上げてバスローブを羽織って部屋を出て浴室へ向かう。
キッチンでは天倉が朝食の準備をしている。
シャワーを浴びる夏音。
夏音「そうか、有史さんが初めてだったんだ」
と、にやける。
夏音「檜垣さんも酷いよね、騙すとか。あ、でも、勘違いしてたのは私だけど」
夏音、はぁーとため息をつく。
鏡に映った自分を見て、そこかしこについたキスマークに気づく。
夏音「檜垣さんのときは嫌だったのに、有史さんだと嬉しいのはやっぱり好きだからかな?」
夏音がシャワーを済ませると、ダイニングテーブルの上には朝食が並んでいる。
天倉「じゃあ食べようか」
夏音・天倉「いただきます」
朝食を食べるふたり。
天倉「今日は深里の部屋を片付けようと思うんだ。手伝ってくれるかい?」
夏音「え?」
箸を止め、夏音がまじまじと天倉を見つめる。
天倉はなんでもないように食事を続けている。
天倉「いつまでもあのままじゃいけないだろ。さすがに仏壇を片付けたりまではしないけど、部屋はもう片付けなくちゃ」
夏音「いいんですか」
天倉「僕はもう、残りの人生は夏音と生きていくって決めたからね」
少し赤い顔で天倉が眼鏡をあげる。
夏音も照れて俯く。
ふたりで朝食の後片付けをしていると、ピンポーンとインターフォンが鳴る。
天倉「はーい。……母さん?」
画面を見た天倉、怪訝そうに眉をひそめる。
玄関へ行く天倉のあとを夏音も着いていく。
天倉「母さん、なんの用ですか?」
千寿子「有史さん、お見合いに行きますよ」
天倉「ちょ、ちょっと!」
千寿子、強引に天倉の手を引っ張る。
千寿子「昨日、承知してくださったでしょ」
天倉「あれのどこを取ったら承知したことになるんですか!」
夏音「あ……」
使用人の男が千寿子に命じられて天倉の手を掴み、強引に引きずっていく。
千寿子「さあさ、行きましょう」
天倉「ちょっと待ってください! 夏音!」
抵抗むなしく、天倉は車に押し込められ、そのまま千寿子一行を乗せた車は走り去ってしまう。
夏音「え、ええーっ!」