【シナリオ】溺愛社長の2度目の恋
第18話 新社長!?
○一流ホテルのパーティ会場(夜)
きらびやかな衣装をまとった人で賑わう会場前。
以前、天倉から買ってもらったドレス姿で夏音が誰か探すようにきょろきょろしている。
檜垣「夏音ちゃん、こっち!」
夏音「檜垣さん!」
少し離れたところで手を挙げた檜垣を見つけ、夏音が駆け寄る。
檜垣「おっ、ドレス似合ってるじゃないか」
夏音「ありがとうございます。これ、有史さんが買ってくれたのなんです」
と、照れる。
檜垣「あー、そう……」
と、少し面白くなさそうな顔。
夏音「でもいいんですか、本当に?」
檜垣「いいのいいの。言っただろ、俺まだ夏音ちゃんを諦めてないって」
ニシシと楽しそうに笑う檜垣。
檜垣「じゃあ行きますか、お姫様?」
夏音「はい、よろしくお願いします」
恭しく出された檜垣の手に夏音が自分の手をのせ、一歩踏み出す。
(回想)
○SE社長室
夏音「私はちゃんと有史さんの口から、有史さんの気持ちを聞きたい。本当に私と別れる気だとしても」
強い意志を込めて真っ直ぐに檜垣を見る夏音。
檜垣もじっと夏音を見つめ返す。
不意に檜垣がふっと表情を緩める。
檜垣「了解。そうこなくっちゃな。んで、ここに四菱地所主催のパーティチケットがあるわけだが……」
檜垣がテーブルの上へチケットを2枚、滑らせる。
末石「おまえ、こんなものどうやって手に入れたんだ?」
檜垣「んー、裏ルート? 俺、末石さんと違って顔広いし」
と、うそぶく。
檜垣「会社や家に突撃したって追い返されるのがオチだ。なら、他の手段ってわけ」
夏音「行きます!」
檜垣「会えるとは思うけど、話ができるかは保証しないよ」
夏音「かまいません。有史さんに会えばきっと、なんとかなるはずだから」
少しだけ明るい顔の夏音。
檜垣「へー、そう」
と、少し面白くなさそう。
末石「でもお前、いいのか? 振られた女のためにそんな」
檜垣「ん? 俺まだ、夏音ちゃん諦めてないし。天倉さんの口からはっきり別れを言ってもらって、夏音ちゃんに諦めてもらおうと思って。んで、弱ってるところを慰めて俺のものにする」
末石「……あくどい」
夏音「でも私、檜垣さんが優しいの知ってますから」
檜垣「だから俺はー」
檜垣が照れて笑いが起こる。
(回想終わり)
○再びパーティ会場
檜垣にエスコートされて会場に入る夏音。
きょろきょろと見渡して天倉を探す。
檜垣「夏音ちゃん、あそこ」
檜垣が指さす先には天倉がいる。
いつもの柔和な雰囲気とは違い、どこが張り詰めたものをまとっている。
夏音「髪型と眼鏡が違うからかな……?」
檜垣「夏音ちゃん?」
夏音「あ、なんでもないです」
と、笑って誤魔化す。
夏音M「なんか、別人みたい……」
パーティがはじまり、夏音は天倉に近づこうとするが人に阻まれてなかなかできない。
夏音「すみません」
やっと手が届くと思っても、すぐにその場から天倉はいなくなる。
女性「天倉会長」
天倉「まだ会長は早いですよ」
男性「いやいや、もうすでに立派な手腕を発揮されているとか。頼もしい限りです」
遠くで男女に囲まれる天倉を夏音はぽつんと見ている。
夏音M「嘘っぽい笑顔。あんなの、有史さんじゃない」
檜垣「夏音ちゃん、首尾はどうだ?」
夏音、ふるふると首を振る。
檜垣「まあ、あれじゃな」
と、囲まれている天倉を見る。
天倉がこちらを見ていることに気づいた檜垣、ぐっと夏音の腰を抱き寄せる。
夏音「ひ、檜垣さん?」
天倉、檜垣を睨みつける。
檜垣「……まだその気、と」
夏音「檜垣さん、どうかしたんですか?」
檜垣「ん? なんでもない」
ちらっともう一度檜垣が天倉を見たときにはすでに、天倉は周りの人間とにこやかに話をしている。
檜垣「どうする? このまま尻尾を巻いて帰る?」
夏音「帰りません!」
景気づけに近くのグラスのお酒をぐいっと一気飲みし、夏音がまた天倉の方へと足を踏み出す。
夏音「有史さん!」
やっと届いた、と嬉しくて笑って夏音が天倉を見上げる。
天倉「誰?」
冷たい視線で見下ろされ、一気に顔色をなくす夏音。
夏音「わ、わた、私は……」
天倉「ああ。君との関係はもう終わったはずだ。気安く呼ばないでくれるかな」
夏音の手を冷たく振り払い、天倉が去っていく。
檜垣「夏音ちゃん、大丈夫?」
夏音「……帰る」
俯き、いまにも泣きだしそうな夏音。
檜垣「そうだな、そうしたほうがいい」
夏音を抱いて檜垣が会場を出る。
檜垣がちらりと振り返ると、心配そうにこちらを見ている天倉と目があったが、すぐに逸らされる。
○タクシーの車内(夜)
つらそうに俯いている夏音を、自分の肩へ抱き寄せる檜垣。
檜垣「……つらいよな」
夏音は唇を噛みしめて涙を堪えている。
夏音「私、甘かったんですかね。きっと会ったら、ちゃんと話してくれるって……」
檜垣「まあ場所が場所だから、話なんかできなかったんじゃない? 次の手を考えよう」
夏音「檜垣さん……」
ずっと夏音が鼻を啜る。
○天倉家(夜)
タクシーを降り、檜垣も家の中まで着いてくる。
夏音「コーヒーでも淹れますね」
檜垣「夏音」
夏音の手を取り、檜垣がぎゅっと抱きしめてくる。
檜垣「泣いて、いいんだぞ」
夏音「や、やだ、檜垣さん。なに、言ってんですか」
震える身体で夏音が檜垣の腕から抜け出ようとする。
が、檜垣は出られないようにますます強く抱きしめる。
檜垣「いつから泣いてないんだ? 天倉さんがいなくなってから? さっきのあれでもう限界だろ」
夏音「……ひ、檜垣さん、は、離して」
檜垣「離さない。だってこのままじゃ夏音が壊れる」
夏音「わ、私は大丈夫、だ、か、ら……」
ぽろりと落ちた涙を皮切りに、ぼろぼろと夏音は泣き続ける。
檜垣、夏音を抱きしめたまま、黙って夏音の嗚咽を聞いている。
檜垣「夏音。やっぱり天倉さんやめて俺にしない? 俺だったらこんなふうに夏音を泣かせたりしないよ」
夏音「で、でも。私は」
檜垣「うん、そうか」
夏音の背中をぽんぽんしながら、残念そうに檜垣が天井を仰ぐ。
泣き疲れてベッドでうとうとしはじめた夏音のあたまを、檜垣が撫でている。
夏音「有史さん……」
天倉の名前を呟き、夏音がまたぽろりと涙をこぼす。
檜垣「なんか事情があるんだろうけど。夏音をこんなに泣かせる天倉さんは許せないわ。一発、殴らないとだな……」
○SEオフィス
夏音が出社すると社内がざわめいている。
誰も彼もが社長室を覗いていて、また千寿子が来たのかと覗いてみたら、檜垣がなぜか社長の椅子に座っている。
檜垣「おはよう、夏音ちゃん!」
夏音を見つけた檜垣が、勢いよくドアを開けて社長室から出てくる。
夏音「檜垣さん!? どうしたんですか!?」
檜垣「んー、俺、今日からここの社長になったから!」
夏音「はいっ!?」
末石を探すと、目のあった末石が諦めろと言わんばかりにあたまを振る。
檜垣「そうだ、夏音ちゃんを社長秘書に任命しちゃおっかなー。あ、でも、そうなるとカドの仕事が滞って困るかー」
檜垣は楽しそうに話しながら夏音を社長室へ引っ張っていく。
夏音「檜垣さん!? いったいどういうことですか!?」
檜垣「だから俺、今日からここの社長になったんだって。よろしくな、夏音ちゃん」
檜垣が人の悪い顔でニヤリと笑う。
きらびやかな衣装をまとった人で賑わう会場前。
以前、天倉から買ってもらったドレス姿で夏音が誰か探すようにきょろきょろしている。
檜垣「夏音ちゃん、こっち!」
夏音「檜垣さん!」
少し離れたところで手を挙げた檜垣を見つけ、夏音が駆け寄る。
檜垣「おっ、ドレス似合ってるじゃないか」
夏音「ありがとうございます。これ、有史さんが買ってくれたのなんです」
と、照れる。
檜垣「あー、そう……」
と、少し面白くなさそうな顔。
夏音「でもいいんですか、本当に?」
檜垣「いいのいいの。言っただろ、俺まだ夏音ちゃんを諦めてないって」
ニシシと楽しそうに笑う檜垣。
檜垣「じゃあ行きますか、お姫様?」
夏音「はい、よろしくお願いします」
恭しく出された檜垣の手に夏音が自分の手をのせ、一歩踏み出す。
(回想)
○SE社長室
夏音「私はちゃんと有史さんの口から、有史さんの気持ちを聞きたい。本当に私と別れる気だとしても」
強い意志を込めて真っ直ぐに檜垣を見る夏音。
檜垣もじっと夏音を見つめ返す。
不意に檜垣がふっと表情を緩める。
檜垣「了解。そうこなくっちゃな。んで、ここに四菱地所主催のパーティチケットがあるわけだが……」
檜垣がテーブルの上へチケットを2枚、滑らせる。
末石「おまえ、こんなものどうやって手に入れたんだ?」
檜垣「んー、裏ルート? 俺、末石さんと違って顔広いし」
と、うそぶく。
檜垣「会社や家に突撃したって追い返されるのがオチだ。なら、他の手段ってわけ」
夏音「行きます!」
檜垣「会えるとは思うけど、話ができるかは保証しないよ」
夏音「かまいません。有史さんに会えばきっと、なんとかなるはずだから」
少しだけ明るい顔の夏音。
檜垣「へー、そう」
と、少し面白くなさそう。
末石「でもお前、いいのか? 振られた女のためにそんな」
檜垣「ん? 俺まだ、夏音ちゃん諦めてないし。天倉さんの口からはっきり別れを言ってもらって、夏音ちゃんに諦めてもらおうと思って。んで、弱ってるところを慰めて俺のものにする」
末石「……あくどい」
夏音「でも私、檜垣さんが優しいの知ってますから」
檜垣「だから俺はー」
檜垣が照れて笑いが起こる。
(回想終わり)
○再びパーティ会場
檜垣にエスコートされて会場に入る夏音。
きょろきょろと見渡して天倉を探す。
檜垣「夏音ちゃん、あそこ」
檜垣が指さす先には天倉がいる。
いつもの柔和な雰囲気とは違い、どこが張り詰めたものをまとっている。
夏音「髪型と眼鏡が違うからかな……?」
檜垣「夏音ちゃん?」
夏音「あ、なんでもないです」
と、笑って誤魔化す。
夏音M「なんか、別人みたい……」
パーティがはじまり、夏音は天倉に近づこうとするが人に阻まれてなかなかできない。
夏音「すみません」
やっと手が届くと思っても、すぐにその場から天倉はいなくなる。
女性「天倉会長」
天倉「まだ会長は早いですよ」
男性「いやいや、もうすでに立派な手腕を発揮されているとか。頼もしい限りです」
遠くで男女に囲まれる天倉を夏音はぽつんと見ている。
夏音M「嘘っぽい笑顔。あんなの、有史さんじゃない」
檜垣「夏音ちゃん、首尾はどうだ?」
夏音、ふるふると首を振る。
檜垣「まあ、あれじゃな」
と、囲まれている天倉を見る。
天倉がこちらを見ていることに気づいた檜垣、ぐっと夏音の腰を抱き寄せる。
夏音「ひ、檜垣さん?」
天倉、檜垣を睨みつける。
檜垣「……まだその気、と」
夏音「檜垣さん、どうかしたんですか?」
檜垣「ん? なんでもない」
ちらっともう一度檜垣が天倉を見たときにはすでに、天倉は周りの人間とにこやかに話をしている。
檜垣「どうする? このまま尻尾を巻いて帰る?」
夏音「帰りません!」
景気づけに近くのグラスのお酒をぐいっと一気飲みし、夏音がまた天倉の方へと足を踏み出す。
夏音「有史さん!」
やっと届いた、と嬉しくて笑って夏音が天倉を見上げる。
天倉「誰?」
冷たい視線で見下ろされ、一気に顔色をなくす夏音。
夏音「わ、わた、私は……」
天倉「ああ。君との関係はもう終わったはずだ。気安く呼ばないでくれるかな」
夏音の手を冷たく振り払い、天倉が去っていく。
檜垣「夏音ちゃん、大丈夫?」
夏音「……帰る」
俯き、いまにも泣きだしそうな夏音。
檜垣「そうだな、そうしたほうがいい」
夏音を抱いて檜垣が会場を出る。
檜垣がちらりと振り返ると、心配そうにこちらを見ている天倉と目があったが、すぐに逸らされる。
○タクシーの車内(夜)
つらそうに俯いている夏音を、自分の肩へ抱き寄せる檜垣。
檜垣「……つらいよな」
夏音は唇を噛みしめて涙を堪えている。
夏音「私、甘かったんですかね。きっと会ったら、ちゃんと話してくれるって……」
檜垣「まあ場所が場所だから、話なんかできなかったんじゃない? 次の手を考えよう」
夏音「檜垣さん……」
ずっと夏音が鼻を啜る。
○天倉家(夜)
タクシーを降り、檜垣も家の中まで着いてくる。
夏音「コーヒーでも淹れますね」
檜垣「夏音」
夏音の手を取り、檜垣がぎゅっと抱きしめてくる。
檜垣「泣いて、いいんだぞ」
夏音「や、やだ、檜垣さん。なに、言ってんですか」
震える身体で夏音が檜垣の腕から抜け出ようとする。
が、檜垣は出られないようにますます強く抱きしめる。
檜垣「いつから泣いてないんだ? 天倉さんがいなくなってから? さっきのあれでもう限界だろ」
夏音「……ひ、檜垣さん、は、離して」
檜垣「離さない。だってこのままじゃ夏音が壊れる」
夏音「わ、私は大丈夫、だ、か、ら……」
ぽろりと落ちた涙を皮切りに、ぼろぼろと夏音は泣き続ける。
檜垣、夏音を抱きしめたまま、黙って夏音の嗚咽を聞いている。
檜垣「夏音。やっぱり天倉さんやめて俺にしない? 俺だったらこんなふうに夏音を泣かせたりしないよ」
夏音「で、でも。私は」
檜垣「うん、そうか」
夏音の背中をぽんぽんしながら、残念そうに檜垣が天井を仰ぐ。
泣き疲れてベッドでうとうとしはじめた夏音のあたまを、檜垣が撫でている。
夏音「有史さん……」
天倉の名前を呟き、夏音がまたぽろりと涙をこぼす。
檜垣「なんか事情があるんだろうけど。夏音をこんなに泣かせる天倉さんは許せないわ。一発、殴らないとだな……」
○SEオフィス
夏音が出社すると社内がざわめいている。
誰も彼もが社長室を覗いていて、また千寿子が来たのかと覗いてみたら、檜垣がなぜか社長の椅子に座っている。
檜垣「おはよう、夏音ちゃん!」
夏音を見つけた檜垣が、勢いよくドアを開けて社長室から出てくる。
夏音「檜垣さん!? どうしたんですか!?」
檜垣「んー、俺、今日からここの社長になったから!」
夏音「はいっ!?」
末石を探すと、目のあった末石が諦めろと言わんばかりにあたまを振る。
檜垣「そうだ、夏音ちゃんを社長秘書に任命しちゃおっかなー。あ、でも、そうなるとカドの仕事が滞って困るかー」
檜垣は楽しそうに話しながら夏音を社長室へ引っ張っていく。
夏音「檜垣さん!? いったいどういうことですか!?」
檜垣「だから俺、今日からここの社長になったんだって。よろしくな、夏音ちゃん」
檜垣が人の悪い顔でニヤリと笑う。