【シナリオ】溺愛社長の2度目の恋
第6話 本気のキス――!?
○リゾート地のホテル(夕)
きらびやかな、高級そうなロビー。
夏音と天倉が到着した途端、支配人らしき男がすっ飛んでくる。
支配人「有史様。ようこそいらっしゃいました」
天倉「うん、よろしく頼むよ」
と、頷く。
夏音「……有史さん」
部屋へ案内する支配人の後ろを歩きながら夏音が天倉をつつく。
天倉「ああ、彼は支配人だよ。ここは四菱系列のホテルでね」
夏音「そうなんですね……」
当然の顔の天倉。
夏音M「さすが、御曹司っていうか」
支配人「では、ごゆっくり」
一通り説明した支配人が下がり、ふたりになる。
スイートルーム、部屋に置かれる、キングサイズのベッドに狼狽えている夏音。
夏音M「これって、これって……ええーっ!?」
天倉「なに突っ立ってんの?」
と、後ろから声をかける。
夏音「だって、これ、……」
ベッドを指さし夏音、口をぱくぱくさせる。
天倉「新婚旅行なんだから当たり前だろ?」
と、意地悪く夏音の顔をのぞき込む。
夏音「でも、偽装、……」
天倉「ん? ここ、四菱系列のホテルだって言っただろ? 僕が泊まれば当然、両親の耳に入る。なら、ツインになんてしたら怪しまれるに決まってるよ」
夏音「うっ、あっ、……そうですね」
と、がっくり項垂れる。
(回想)
○天倉の車の中
夏音N「週末は新婚旅行という名の現地確認だった」
天倉「寒かったり暑かったりしたら言ってね」
夏音「あっ、はい」
ぼーっと見ていた窓の外から慌てて天倉へ視線を戻す。
天倉「静かな落ち着いたところでね。温泉も出ているんだ。少しだけ離れたところに観光地もあって、お客には不自由しないところだよ」
夏音「はい」
天倉「将来的にはリゾートウェディングなんかも考えているみたいだし、今度オープンするレストランは披露宴のことなんかも考えた方がいいかもね」
夏音「わかりました」
手元のタブレットで夏音、資料を確認する。
天倉「それで。せっかくの新婚旅行なんだからこの際、一気に距離を縮めようかなー……なんて」
夏音、手にしていたタブレットを落としそうになり、慌て掴み直す。
天倉、くすりと笑う。
夏音「そ、そぅですね」
と、顔を真っ赤にして俯く。
夏音M「せ、せっかく無理に忘れてたのに、言わなくったって……」
○カド・ドゥ・ディユ(以下、カド)建設予定地
細い道を抜けた先、森の中の一部が開け、整地されている。
その横へ先に、ルノートゥインゴが停まっている。
その横に天倉が車を停める。
天倉と夏音が車を降りるのと同時にトゥインゴから檜垣(ひがき)浩次(こうじ)(38)が降りてくる。
檜垣「天倉さん!」
天倉「檜垣! 今日はわざわざすまないね」
檜垣「いや、俺の店を作ってもらうためなんだからかまわないよ」
にこにことふたり、握手をしたりしていて、夏音は若干、取り残されている。
天倉「夏音、紹介するね。カド・ドゥ・ディユのオーナーで僕の、大学の後輩の檜垣」
檜垣「初めまして」
夏音「……初めまして、……古海……夏音です」
にかっと笑って檜垣から差し出された手を、戸惑いながら夏音が握り返す。
天倉「夏音は山原の後任デザイナーで僕の妻なんだ」
檜垣「へえ、そう……はぁっ!?」
素直に頷きかけた檜垣だが、次の瞬間には信じられないという顔で天倉を見る。
檜垣「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って。じゃあ天倉さん、深里さんをやっと吹っ切れたってこと?」
天倉「そうだよ。……なーんて嘘。檜垣だから言うけどさ。これは深里を守るための偽装結婚なんだ。あ、だから絶対、他言無用だよ」
檜垣「ならよかった……のか? ねえ?」
と、夏音に訊いてくる。
夏音、曖昧に笑って頷く。
檜垣「んー……ま、いいや! 俺、そういうこと、わかんないし! さ、仕事の話をしよう!」
檜垣が笑い、微妙な空気がなくなって夏音、ほっと息をつく。
夏音M「檜垣さんにはいいのかって訊かれたけど……。私は……」
天倉「やっぱりここはいいな、落ち着いていて。それでいて街までさほど遠くない」
天倉がしみじみと周囲を見渡す。
檜垣「だろ!? 四菱からぶんどって正解だよ」
楽しそうに檜垣は笑っているが、夏音はついていけていない。
夏音「あの、それって……」
天倉「内緒だよ」
天倉からウィンクされ、夏音が顔を赤らめて黙る。
図面とタブレットで打ち合わせを進める。
檜垣「店の名前、フランス語で『神様の贈り物』って意味なんだ。だからこう、可愛い感じ?」
上手く言葉にできないのか、檜垣は手でもやもやと形作っている。
夏音「んー、神様の贈り物というと、私としては小さな女の子が天使からプレゼントをもらっているイメージなんですが……」
檜垣「あー、それいい! そんな感じ! んで、その女の子が大人になって天使と再会……」
檜垣・夏音「森の小さな教会で!」
夏音「実際、結婚式場も計画ってことは、教会も建てる予定なんですか」
檜垣「そうだな、いいよな、それ」
天倉「はぁーっ」
突然聞こえてきた天倉のため息で、盛り上がっていたふたりの話が止まる。
天倉「仲がよくて羨ましいね……。おじさんはお呼びじゃないかな」
檜垣「おじさんって天倉さんと俺、ふたつしか違わないじゃねーか!」
夏音、同意するようにうんうんと頷く。
天倉「まあ、別にいいんだけどね……。はぁーっ」
と、また、意味深にため息をつく。
(回想終わり)
○ホテルの部屋(夕)
ベッドに座った天倉が隣をぽんぽんするので、夏音が戸惑いつつそこに座る。
天倉「昼間は檜垣と、楽しそうだったね」
夏音「え?」
意味がわからず夏音、天倉の顔を見る。
天倉「檜垣はいい奴だから、お勧めだよ」
夏音「有史さん?」
ますます意味がわからず夏音、天倉の顔を見つめる。
天倉「でも、いまは僕の妻なんだから。夫の前で他の男と仲良くしていた悪い子には、罰が必要だよね?」
トン、と天倉が夏音を押し、簡単に夏音がベッドへと倒れる。
夏音、倒れたままのしかかってくる天倉の顔を間抜けにも見つめている。
ゆっくりと天倉の顔が近づいてくる。
夏音M「眼鏡かけたままってキスできるんだっけ? ってこの間、したか」
目を閉じた天倉の顔がさらに近づいてくるが、夏音は呆然と見つめたまま。
唇が触れる直前になって、天倉が目を開けて離れる。
天倉「夏音。キスするときは目を閉じるもんだよ」
夏音「あ、はい」
天倉の手で目を覆われ、素直に夏音が目を閉じる。
天倉の手が離れ、目を閉じたままドキドキしている夏音。
天倉の唇が夏音の額に触れて離れる。
夏音、赤い顔で額を押さえ、戸惑っている。
天倉「ん? お子ちゃまの夏音のここにキスしたら、また倒れちゃうかもしれないからね」
と、悪戯っぽく自分の唇にちょんちょんと触れる。
夏音「えっ、あっ、……そんなことないですよ」
と、むくれて見せながらも赤い顔。
天倉「さ、食事に行こう。ここのレストランは三つ星も取ったことあるんだよ」
夏音「え、そうなんですか」
天倉「そうなんだよ。きっと満足してもらえると思うよ」
夏音と天倉、部屋を出ていく。
○同ホテル レストラン(夜)
フレンチのコースを食べるふたり
○同ホテル 部屋(夜)
風呂から出てきた夏音、ベッドまで行ったもののどうしていいのかわからずに寝転んでタブレットを見ている天倉を見下ろす。
天倉「ん? どうかしたのかい?」
夏音「えっ!?」
天倉から手を引かれ、夏音がその上に倒れる。
天倉「んー、前から思ってたけど、夏音ってちょっと痩せすぎだよね。もっと食べさせないと」
夏音「はぁ……」
天倉と密着していて、夏音は胸をドキドキさせている。
天倉が器用に体勢を変え、今度はベッドの上から夏音が天倉を見上げる形になる。
天倉「ハグは慣れてきたと思うから、キスの練習しようか」
夏音「キ、キスですか!?」
と、目を白黒させる。
天倉「そ、キス。さっきみたいなのじゃなくて、ちゃんとしたの」
するりと天倉が夏音の頬を撫で熱い目でじっと見下ろす。
見つめ返しながら夏音が期待でごくりとつばを飲み込む。
ゆっくりと天倉の顔が近付いてきて目を閉じる夏音。
そして唇が――。
きらびやかな、高級そうなロビー。
夏音と天倉が到着した途端、支配人らしき男がすっ飛んでくる。
支配人「有史様。ようこそいらっしゃいました」
天倉「うん、よろしく頼むよ」
と、頷く。
夏音「……有史さん」
部屋へ案内する支配人の後ろを歩きながら夏音が天倉をつつく。
天倉「ああ、彼は支配人だよ。ここは四菱系列のホテルでね」
夏音「そうなんですね……」
当然の顔の天倉。
夏音M「さすが、御曹司っていうか」
支配人「では、ごゆっくり」
一通り説明した支配人が下がり、ふたりになる。
スイートルーム、部屋に置かれる、キングサイズのベッドに狼狽えている夏音。
夏音M「これって、これって……ええーっ!?」
天倉「なに突っ立ってんの?」
と、後ろから声をかける。
夏音「だって、これ、……」
ベッドを指さし夏音、口をぱくぱくさせる。
天倉「新婚旅行なんだから当たり前だろ?」
と、意地悪く夏音の顔をのぞき込む。
夏音「でも、偽装、……」
天倉「ん? ここ、四菱系列のホテルだって言っただろ? 僕が泊まれば当然、両親の耳に入る。なら、ツインになんてしたら怪しまれるに決まってるよ」
夏音「うっ、あっ、……そうですね」
と、がっくり項垂れる。
(回想)
○天倉の車の中
夏音N「週末は新婚旅行という名の現地確認だった」
天倉「寒かったり暑かったりしたら言ってね」
夏音「あっ、はい」
ぼーっと見ていた窓の外から慌てて天倉へ視線を戻す。
天倉「静かな落ち着いたところでね。温泉も出ているんだ。少しだけ離れたところに観光地もあって、お客には不自由しないところだよ」
夏音「はい」
天倉「将来的にはリゾートウェディングなんかも考えているみたいだし、今度オープンするレストランは披露宴のことなんかも考えた方がいいかもね」
夏音「わかりました」
手元のタブレットで夏音、資料を確認する。
天倉「それで。せっかくの新婚旅行なんだからこの際、一気に距離を縮めようかなー……なんて」
夏音、手にしていたタブレットを落としそうになり、慌て掴み直す。
天倉、くすりと笑う。
夏音「そ、そぅですね」
と、顔を真っ赤にして俯く。
夏音M「せ、せっかく無理に忘れてたのに、言わなくったって……」
○カド・ドゥ・ディユ(以下、カド)建設予定地
細い道を抜けた先、森の中の一部が開け、整地されている。
その横へ先に、ルノートゥインゴが停まっている。
その横に天倉が車を停める。
天倉と夏音が車を降りるのと同時にトゥインゴから檜垣(ひがき)浩次(こうじ)(38)が降りてくる。
檜垣「天倉さん!」
天倉「檜垣! 今日はわざわざすまないね」
檜垣「いや、俺の店を作ってもらうためなんだからかまわないよ」
にこにことふたり、握手をしたりしていて、夏音は若干、取り残されている。
天倉「夏音、紹介するね。カド・ドゥ・ディユのオーナーで僕の、大学の後輩の檜垣」
檜垣「初めまして」
夏音「……初めまして、……古海……夏音です」
にかっと笑って檜垣から差し出された手を、戸惑いながら夏音が握り返す。
天倉「夏音は山原の後任デザイナーで僕の妻なんだ」
檜垣「へえ、そう……はぁっ!?」
素直に頷きかけた檜垣だが、次の瞬間には信じられないという顔で天倉を見る。
檜垣「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って。じゃあ天倉さん、深里さんをやっと吹っ切れたってこと?」
天倉「そうだよ。……なーんて嘘。檜垣だから言うけどさ。これは深里を守るための偽装結婚なんだ。あ、だから絶対、他言無用だよ」
檜垣「ならよかった……のか? ねえ?」
と、夏音に訊いてくる。
夏音、曖昧に笑って頷く。
檜垣「んー……ま、いいや! 俺、そういうこと、わかんないし! さ、仕事の話をしよう!」
檜垣が笑い、微妙な空気がなくなって夏音、ほっと息をつく。
夏音M「檜垣さんにはいいのかって訊かれたけど……。私は……」
天倉「やっぱりここはいいな、落ち着いていて。それでいて街までさほど遠くない」
天倉がしみじみと周囲を見渡す。
檜垣「だろ!? 四菱からぶんどって正解だよ」
楽しそうに檜垣は笑っているが、夏音はついていけていない。
夏音「あの、それって……」
天倉「内緒だよ」
天倉からウィンクされ、夏音が顔を赤らめて黙る。
図面とタブレットで打ち合わせを進める。
檜垣「店の名前、フランス語で『神様の贈り物』って意味なんだ。だからこう、可愛い感じ?」
上手く言葉にできないのか、檜垣は手でもやもやと形作っている。
夏音「んー、神様の贈り物というと、私としては小さな女の子が天使からプレゼントをもらっているイメージなんですが……」
檜垣「あー、それいい! そんな感じ! んで、その女の子が大人になって天使と再会……」
檜垣・夏音「森の小さな教会で!」
夏音「実際、結婚式場も計画ってことは、教会も建てる予定なんですか」
檜垣「そうだな、いいよな、それ」
天倉「はぁーっ」
突然聞こえてきた天倉のため息で、盛り上がっていたふたりの話が止まる。
天倉「仲がよくて羨ましいね……。おじさんはお呼びじゃないかな」
檜垣「おじさんって天倉さんと俺、ふたつしか違わないじゃねーか!」
夏音、同意するようにうんうんと頷く。
天倉「まあ、別にいいんだけどね……。はぁーっ」
と、また、意味深にため息をつく。
(回想終わり)
○ホテルの部屋(夕)
ベッドに座った天倉が隣をぽんぽんするので、夏音が戸惑いつつそこに座る。
天倉「昼間は檜垣と、楽しそうだったね」
夏音「え?」
意味がわからず夏音、天倉の顔を見る。
天倉「檜垣はいい奴だから、お勧めだよ」
夏音「有史さん?」
ますます意味がわからず夏音、天倉の顔を見つめる。
天倉「でも、いまは僕の妻なんだから。夫の前で他の男と仲良くしていた悪い子には、罰が必要だよね?」
トン、と天倉が夏音を押し、簡単に夏音がベッドへと倒れる。
夏音、倒れたままのしかかってくる天倉の顔を間抜けにも見つめている。
ゆっくりと天倉の顔が近づいてくる。
夏音M「眼鏡かけたままってキスできるんだっけ? ってこの間、したか」
目を閉じた天倉の顔がさらに近づいてくるが、夏音は呆然と見つめたまま。
唇が触れる直前になって、天倉が目を開けて離れる。
天倉「夏音。キスするときは目を閉じるもんだよ」
夏音「あ、はい」
天倉の手で目を覆われ、素直に夏音が目を閉じる。
天倉の手が離れ、目を閉じたままドキドキしている夏音。
天倉の唇が夏音の額に触れて離れる。
夏音、赤い顔で額を押さえ、戸惑っている。
天倉「ん? お子ちゃまの夏音のここにキスしたら、また倒れちゃうかもしれないからね」
と、悪戯っぽく自分の唇にちょんちょんと触れる。
夏音「えっ、あっ、……そんなことないですよ」
と、むくれて見せながらも赤い顔。
天倉「さ、食事に行こう。ここのレストランは三つ星も取ったことあるんだよ」
夏音「え、そうなんですか」
天倉「そうなんだよ。きっと満足してもらえると思うよ」
夏音と天倉、部屋を出ていく。
○同ホテル レストラン(夜)
フレンチのコースを食べるふたり
○同ホテル 部屋(夜)
風呂から出てきた夏音、ベッドまで行ったもののどうしていいのかわからずに寝転んでタブレットを見ている天倉を見下ろす。
天倉「ん? どうかしたのかい?」
夏音「えっ!?」
天倉から手を引かれ、夏音がその上に倒れる。
天倉「んー、前から思ってたけど、夏音ってちょっと痩せすぎだよね。もっと食べさせないと」
夏音「はぁ……」
天倉と密着していて、夏音は胸をドキドキさせている。
天倉が器用に体勢を変え、今度はベッドの上から夏音が天倉を見上げる形になる。
天倉「ハグは慣れてきたと思うから、キスの練習しようか」
夏音「キ、キスですか!?」
と、目を白黒させる。
天倉「そ、キス。さっきみたいなのじゃなくて、ちゃんとしたの」
するりと天倉が夏音の頬を撫で熱い目でじっと見下ろす。
見つめ返しながら夏音が期待でごくりとつばを飲み込む。
ゆっくりと天倉の顔が近付いてきて目を閉じる夏音。
そして唇が――。