【シナリオ】溺愛社長の2度目の恋
第8話 悪い子の奥さんにはお仕置きが必要だよね?
○SEオフィス
自分の席で仕事をしている夏音。
社長室のドアが開き、天倉が顔を出す。
視線に気づいて顔を上げた夏音、天倉と目が合う。
天倉「夏音」
天倉から手招きされ夏音、社長室へ行く。
天倉と末石が並んで座る応接セット、勧められ向かい合って夏音が座る。
天倉「これ」
天倉がテーブルに滑らせた落成記念パーティの招待状を夏音、広げて読む。
夏音M「四菱のビルの落成記念パーティ?」
末石「ご夫婦でどうぞってことだが……どうする?」
夏音M「どうする、とは?」
天倉「ようするに母さんはセレブパーティに夏音を連れ出し、住む世界の違いを見せつけて惨めにさせたいんだよ」
夏音「はぁ……」
末石「……深里のときもそうだった」
と、苦々しげに吐き捨てる。
夏音「あのー、なんでそれで私が惨めになるんですか?」
天倉と末石、顔を見合わせる。
天倉「……ちょっと。この子、全く現状把握できてないんだけど」
末石「……ここまで鈍いとかえって羨ましいな」
夏音「なにふたりでコソコソ話しているんですか」
天倉「ううん、なにも」
と、誤魔化すようににっこりと笑う。
天倉「とにかく。夏音にはつらいパーティになると思うけど、どうする? 別に嫌なら僕ひとりで参加するし。……できれば女避けに同伴してほしいけど」
最後、ぼそぼそと目を逸らして天倉が言い、夏音はため息をつく。
夏音「ようするにこれって、あのお母さんからの挑戦状みたいなもんなんですよね? なら受けて立ちますよ」
天倉「頼もしいね、夏音」
夏音「任せてください」
盛り上がるふたりに反して末石がため息をつく。
○新築オフィス兼商業ビル(夜)
タクシーを降り、一等地(丸の内あたり)に建つ、地上35階建てのビルを見上げる夏音。
夏音はデコルテが出るオフショルダーの、マーメイドライン赤いイブニングドレス姿。
天倉はタキシード。
夏音「凄いビルですね」
天倉「そう?」
夏音「それでもってあのビルもあのビルもあっちのビルも有史さんのお家のものなんですよね」
と、建ち並ぶ高層ビルを見渡す。
天倉「僕の父が経営する会社のビル、だよ」
夏音「どっちにしても凄いです……」
はぁっと羨望の息を漏らす夏音に天倉が苦笑いする。
天倉「それじゃ。戦場に乗り込みますか」
夏音「そうですね」
と、差し出された天倉の手に自分の手をのせる。
エレベーターホールではすでに、数人の男女が待っている。
夏音、つい自分の格好がおかしくないか確認してしまう。
天倉、くすりと笑い、夏音に耳打ち。
天倉「大丈夫、似合ってる。自信持って背筋伸ばして」
と、そっと夏音の背中を叩く。
夏音「はい」
と、少し顔を赤らめ、背筋を伸ばす。
(回想)
○ドレスショップ
【一週間前】
きらびやかなドレスが並ぶ中、出したり戻したりしながらドレスを選んでいる天倉。
それを所在なさげに立って見ている夏音。
天倉「夏音、これを着てみて」
夏音「はぁ……」
ドレスを受け取った女性店員と共に夏音、カーテンの向こうへ消える。
夏音M「こんなの、本当に似合うって思ってるのかな……」
ドレスを着せてもらいながら夏音、ため息をつく。
デコルテが出るオフショルダー、マーメイドラインの赤いイブニングドレス。
夏音M「やっぱり、似合ってない」
鏡を見て地味顔の自分には似合っていなくて夏音、泣きそうになる。
夏音「どう、ですか……」
こわごわ、天倉の前へ出る夏音。
天倉、夏音を見て黙り込む。
夏音、ますます泣きそうになる。
天倉「……きれいだ」
夏音「え?」
天倉「きれいだって言ってるんだよ!」
夏音、信じられない顔をする。
天倉「もしかして、似合ってないとか思ってる? いまは化粧もあまりしてないし、ヘアメイクもしてないから、ドレスが浮いて見えるだけだよ。整えたら大丈夫だって。……ちょっと待って」
早業で夏音の髪を簡単に結い、そこにあったバラの花を差す、天倉。
夏音、再び鏡を見てみて少し驚いた顔をする。
天倉「ほら。これだけでも結構変わるだろ」
夏音、こくこくと頷く。
天倉「夏音は素がいいんだから、もっと可愛くすべきだよ」
夏音、頬を赤らめる。
夏音N「その後、何着か試着したけど、結局最初の奴に決まった。レンタルでいいのに、お買い上げした有史さんにはびっくりしたけど」
(回想終わり)
○落成記念パーティ会場
きらびやかな男女の群れに一瞬、気後れする夏音。
天倉から背中を押され、意を決して一歩踏み出す。
若い女性1「あ、天倉社長がいらっしゃった!」
若い女性2「天倉社長ー!」
数人、女性が天倉を取り囲む。
若い女性1「パーティに来られるなんてひさしぶりじゃないですか」
天倉「そうだっけ?」
少し若い女性「そうですよー」
敵意剥き出しに女性、夏音と天倉の間に身体をねじ込む。
女性に囲まれている天倉をぼーっと見ている夏音。
夏音M「有史さんって……モテるんだ。そりゃそうだよね、おじさんはおじさんでもイケおじだもん」
天倉「夏音」
人垣から出てきた天倉の手が夏音を引っ張る。
夏音、女性陣の前へ引っ張りだされる。
天倉「紹介するよ。僕の妻の夏音」
夏音「どうも……初めまして」
しんとなる女性陣。
夏音M「ううっ、視線が痛い……」
年配の男性「有史くんじゃないか!」
天倉「ご無沙汰しております、藤野さん」
にこやかに握手をしている天倉と対照的に、男は夏音に不躾な視線を向けている。
男性「これが例の女性か。フン、貧乏くさい顔だな」
夏音M「貧乏くさい……」
少しだけショックを受けて、夏音が俯く。
男性「こんなどこの馬の骨ともしれない奴より、うちの孫娘はどうだ?」
天倉「申し訳ありません、深里の他に夏音以外、素敵な女性を知りませんので」
天倉がぐいっと夏音の腰を抱き寄せる。
男性「こんな、損にしかならない女とまた結婚して、後悔すればいい」
フン、と鼻息荒く男性が去っていく。
天倉「ごめんね、夏音」
夏音「別にいいですよ」
と、笑って誤魔化す。
天倉と同年代の男性「有史!」
天倉「こんばんは、橋田さん」
男性、天倉の肩を親しそうに叩きながらも、やはり夏音に不躾な視線を向けてくる。
男性「お前も物好きだな、またなんの得もない女と結婚するとか」
天倉「得? そんなの、いっぱいあるよ。それに気づかないなんて君、損してるね」
男性「はぁっ? 庶民と結婚したって損しかないだろ。俺ならごめんだね」
ひらひらと手を振って男性が去り、不快そうに男性の手が触れた肩を天倉が払う。
天倉「夏音、大丈夫?」
心配そうに天倉が夏音の顔を覗き込む。
夏音「えっ、あっ、平気です。でもちょっと疲れちゃったんで、休んでていいですか」
夏音、慌てて笑って誤魔化す。
天倉「無理しなくても……」
天倉より少し年上の男性「有史くん!」
夏音「ほら、呼んでますよ。少し休めば大丈夫ですから」
天倉「じゃあ……」
と、渋々、呼んでいる男性の方に行く。
夏音M「わかっていたことだけど……。やっぱりちょっと、凹んじゃうな」
天倉が挨拶して回るのを、壁際でひとり、夏音が眺めている。
天倉はしょっちゅう、年齢に関係なく女性に声をかけられている。
それに少し、ムッとしている夏音。
遅れてきた末石、夏音の隣に立つ。
末石「お疲れ」
夏音「末石専務こそ、遅くまでお仕事お疲れ様です」
末石、夏音の視線の先で女性に囲まれている天倉を見て、苦笑いを浮かべる。
末石「あれ、全部母親からの刺客だな。どうしても古海と天倉を別れさせたい」
夏音「そうなんですね」
と、イライラと持っていたグラスのお酒を飲み干す。
末石「もしかして妬いているのか」
夏音「そ、そんなこと、あるわけないじゃないですか!」
通りかかったボーイのお盆からグラスを取り、さらに一気に飲み干す夏音。
足がふらつき夏音、末石に支えられる。
末石「大丈夫か」
天倉「夏音!」
気づいた天倉が駆け寄り、夏音を支える。
夏音「だ、大丈夫れすよ」
あきらかに酔った顔で夏音、天倉を見上げる。
天倉「酔ってるね」
末石も同意するように頷く。
天倉「連れて帰るよ。あとよろしく」
末石「わかった」
夏音「酔ってなんかないれすよ……?」
天倉「いいから」
夏音、軽く抵抗したものの、天倉に支えられて会場を出る。
○タクシー(夜)
夏音「有史さんって女性にモテるんれすねー」
天倉「……」
天倉、窓の外を見ているだけで返事をしない。
夏音「お家の釣り合わない、私なんかと偽装結婚するより、あの中から選んだ方がよかったんじゃないれすか」
天倉「……」
夏音「しかも、28にもなって男なれしてない、私なんかよりずっとー」
返事をしない天倉にいじけて、涙目になる。
○天倉家(夜)
夏音の手を掴み、家の中を足早に進んでいく天倉。
天倉の寝室のドアを開け、ベッドへ夏音を突き飛ばす。
天倉、夏音の上からのしかかる。
天倉「さっき言ってたの、いったい、なに?」
夏音「有史、さん?」
と、少し怯えた顔をする。
天倉「悪い子の奥さんには、お仕置きが必要だよねー?」
天倉がニヤリと笑い、夏音はごくりと唾を飲み込む。
自分の席で仕事をしている夏音。
社長室のドアが開き、天倉が顔を出す。
視線に気づいて顔を上げた夏音、天倉と目が合う。
天倉「夏音」
天倉から手招きされ夏音、社長室へ行く。
天倉と末石が並んで座る応接セット、勧められ向かい合って夏音が座る。
天倉「これ」
天倉がテーブルに滑らせた落成記念パーティの招待状を夏音、広げて読む。
夏音M「四菱のビルの落成記念パーティ?」
末石「ご夫婦でどうぞってことだが……どうする?」
夏音M「どうする、とは?」
天倉「ようするに母さんはセレブパーティに夏音を連れ出し、住む世界の違いを見せつけて惨めにさせたいんだよ」
夏音「はぁ……」
末石「……深里のときもそうだった」
と、苦々しげに吐き捨てる。
夏音「あのー、なんでそれで私が惨めになるんですか?」
天倉と末石、顔を見合わせる。
天倉「……ちょっと。この子、全く現状把握できてないんだけど」
末石「……ここまで鈍いとかえって羨ましいな」
夏音「なにふたりでコソコソ話しているんですか」
天倉「ううん、なにも」
と、誤魔化すようににっこりと笑う。
天倉「とにかく。夏音にはつらいパーティになると思うけど、どうする? 別に嫌なら僕ひとりで参加するし。……できれば女避けに同伴してほしいけど」
最後、ぼそぼそと目を逸らして天倉が言い、夏音はため息をつく。
夏音「ようするにこれって、あのお母さんからの挑戦状みたいなもんなんですよね? なら受けて立ちますよ」
天倉「頼もしいね、夏音」
夏音「任せてください」
盛り上がるふたりに反して末石がため息をつく。
○新築オフィス兼商業ビル(夜)
タクシーを降り、一等地(丸の内あたり)に建つ、地上35階建てのビルを見上げる夏音。
夏音はデコルテが出るオフショルダーの、マーメイドライン赤いイブニングドレス姿。
天倉はタキシード。
夏音「凄いビルですね」
天倉「そう?」
夏音「それでもってあのビルもあのビルもあっちのビルも有史さんのお家のものなんですよね」
と、建ち並ぶ高層ビルを見渡す。
天倉「僕の父が経営する会社のビル、だよ」
夏音「どっちにしても凄いです……」
はぁっと羨望の息を漏らす夏音に天倉が苦笑いする。
天倉「それじゃ。戦場に乗り込みますか」
夏音「そうですね」
と、差し出された天倉の手に自分の手をのせる。
エレベーターホールではすでに、数人の男女が待っている。
夏音、つい自分の格好がおかしくないか確認してしまう。
天倉、くすりと笑い、夏音に耳打ち。
天倉「大丈夫、似合ってる。自信持って背筋伸ばして」
と、そっと夏音の背中を叩く。
夏音「はい」
と、少し顔を赤らめ、背筋を伸ばす。
(回想)
○ドレスショップ
【一週間前】
きらびやかなドレスが並ぶ中、出したり戻したりしながらドレスを選んでいる天倉。
それを所在なさげに立って見ている夏音。
天倉「夏音、これを着てみて」
夏音「はぁ……」
ドレスを受け取った女性店員と共に夏音、カーテンの向こうへ消える。
夏音M「こんなの、本当に似合うって思ってるのかな……」
ドレスを着せてもらいながら夏音、ため息をつく。
デコルテが出るオフショルダー、マーメイドラインの赤いイブニングドレス。
夏音M「やっぱり、似合ってない」
鏡を見て地味顔の自分には似合っていなくて夏音、泣きそうになる。
夏音「どう、ですか……」
こわごわ、天倉の前へ出る夏音。
天倉、夏音を見て黙り込む。
夏音、ますます泣きそうになる。
天倉「……きれいだ」
夏音「え?」
天倉「きれいだって言ってるんだよ!」
夏音、信じられない顔をする。
天倉「もしかして、似合ってないとか思ってる? いまは化粧もあまりしてないし、ヘアメイクもしてないから、ドレスが浮いて見えるだけだよ。整えたら大丈夫だって。……ちょっと待って」
早業で夏音の髪を簡単に結い、そこにあったバラの花を差す、天倉。
夏音、再び鏡を見てみて少し驚いた顔をする。
天倉「ほら。これだけでも結構変わるだろ」
夏音、こくこくと頷く。
天倉「夏音は素がいいんだから、もっと可愛くすべきだよ」
夏音、頬を赤らめる。
夏音N「その後、何着か試着したけど、結局最初の奴に決まった。レンタルでいいのに、お買い上げした有史さんにはびっくりしたけど」
(回想終わり)
○落成記念パーティ会場
きらびやかな男女の群れに一瞬、気後れする夏音。
天倉から背中を押され、意を決して一歩踏み出す。
若い女性1「あ、天倉社長がいらっしゃった!」
若い女性2「天倉社長ー!」
数人、女性が天倉を取り囲む。
若い女性1「パーティに来られるなんてひさしぶりじゃないですか」
天倉「そうだっけ?」
少し若い女性「そうですよー」
敵意剥き出しに女性、夏音と天倉の間に身体をねじ込む。
女性に囲まれている天倉をぼーっと見ている夏音。
夏音M「有史さんって……モテるんだ。そりゃそうだよね、おじさんはおじさんでもイケおじだもん」
天倉「夏音」
人垣から出てきた天倉の手が夏音を引っ張る。
夏音、女性陣の前へ引っ張りだされる。
天倉「紹介するよ。僕の妻の夏音」
夏音「どうも……初めまして」
しんとなる女性陣。
夏音M「ううっ、視線が痛い……」
年配の男性「有史くんじゃないか!」
天倉「ご無沙汰しております、藤野さん」
にこやかに握手をしている天倉と対照的に、男は夏音に不躾な視線を向けている。
男性「これが例の女性か。フン、貧乏くさい顔だな」
夏音M「貧乏くさい……」
少しだけショックを受けて、夏音が俯く。
男性「こんなどこの馬の骨ともしれない奴より、うちの孫娘はどうだ?」
天倉「申し訳ありません、深里の他に夏音以外、素敵な女性を知りませんので」
天倉がぐいっと夏音の腰を抱き寄せる。
男性「こんな、損にしかならない女とまた結婚して、後悔すればいい」
フン、と鼻息荒く男性が去っていく。
天倉「ごめんね、夏音」
夏音「別にいいですよ」
と、笑って誤魔化す。
天倉と同年代の男性「有史!」
天倉「こんばんは、橋田さん」
男性、天倉の肩を親しそうに叩きながらも、やはり夏音に不躾な視線を向けてくる。
男性「お前も物好きだな、またなんの得もない女と結婚するとか」
天倉「得? そんなの、いっぱいあるよ。それに気づかないなんて君、損してるね」
男性「はぁっ? 庶民と結婚したって損しかないだろ。俺ならごめんだね」
ひらひらと手を振って男性が去り、不快そうに男性の手が触れた肩を天倉が払う。
天倉「夏音、大丈夫?」
心配そうに天倉が夏音の顔を覗き込む。
夏音「えっ、あっ、平気です。でもちょっと疲れちゃったんで、休んでていいですか」
夏音、慌てて笑って誤魔化す。
天倉「無理しなくても……」
天倉より少し年上の男性「有史くん!」
夏音「ほら、呼んでますよ。少し休めば大丈夫ですから」
天倉「じゃあ……」
と、渋々、呼んでいる男性の方に行く。
夏音M「わかっていたことだけど……。やっぱりちょっと、凹んじゃうな」
天倉が挨拶して回るのを、壁際でひとり、夏音が眺めている。
天倉はしょっちゅう、年齢に関係なく女性に声をかけられている。
それに少し、ムッとしている夏音。
遅れてきた末石、夏音の隣に立つ。
末石「お疲れ」
夏音「末石専務こそ、遅くまでお仕事お疲れ様です」
末石、夏音の視線の先で女性に囲まれている天倉を見て、苦笑いを浮かべる。
末石「あれ、全部母親からの刺客だな。どうしても古海と天倉を別れさせたい」
夏音「そうなんですね」
と、イライラと持っていたグラスのお酒を飲み干す。
末石「もしかして妬いているのか」
夏音「そ、そんなこと、あるわけないじゃないですか!」
通りかかったボーイのお盆からグラスを取り、さらに一気に飲み干す夏音。
足がふらつき夏音、末石に支えられる。
末石「大丈夫か」
天倉「夏音!」
気づいた天倉が駆け寄り、夏音を支える。
夏音「だ、大丈夫れすよ」
あきらかに酔った顔で夏音、天倉を見上げる。
天倉「酔ってるね」
末石も同意するように頷く。
天倉「連れて帰るよ。あとよろしく」
末石「わかった」
夏音「酔ってなんかないれすよ……?」
天倉「いいから」
夏音、軽く抵抗したものの、天倉に支えられて会場を出る。
○タクシー(夜)
夏音「有史さんって女性にモテるんれすねー」
天倉「……」
天倉、窓の外を見ているだけで返事をしない。
夏音「お家の釣り合わない、私なんかと偽装結婚するより、あの中から選んだ方がよかったんじゃないれすか」
天倉「……」
夏音「しかも、28にもなって男なれしてない、私なんかよりずっとー」
返事をしない天倉にいじけて、涙目になる。
○天倉家(夜)
夏音の手を掴み、家の中を足早に進んでいく天倉。
天倉の寝室のドアを開け、ベッドへ夏音を突き飛ばす。
天倉、夏音の上からのしかかる。
天倉「さっき言ってたの、いったい、なに?」
夏音「有史、さん?」
と、少し怯えた顔をする。
天倉「悪い子の奥さんには、お仕置きが必要だよねー?」
天倉がニヤリと笑い、夏音はごくりと唾を飲み込む。