距離感
会社から、自分の家までは地下鉄で4駅ほど。

そこから、歩いて15分ほどのアパートの一室が今住んでいる家だ。

電車から降りて、改札を抜けて。

今度こそ「お疲れ様でした」と言って頭を下げたのだが、

「いや、俺も家こっちだから」と言って。

王子は私についてくる。

「え、送ってくれなくて大丈夫ですって」

「いやー。だって俺の家こっちだもん」

いやな予感はした。

しかも、それは当たった。

王子の家は私の家から200メートルぐらいしか離れていない一軒家だった。

外観が黒で統一されたお洒落な一軒家だ。

「まさかのご近所さんでしたか」

王子が感心する。

「…どうして、今まで会わなかったのでしょうか」

王子と出逢って3ヵ月。

こんなに近いのなら、顔を見合わせそうなものだけど。

「そりゃー、俺。毎日遅刻しているし。土日は出かけてるし」

何故かドヤ顔で言う王子に「なんてこったい」と心の中で叫ぶ。

「近所だと、安全だね。カッチャン一人暮らしでしょ?」

「……」

うぉぉぉぉ(涙)
< 13 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop