距離感
モヤモヤとしたまま、梅雨が明けて、本格的な夏がやってきて。

お盆の時期になった。

うちの会社は一週間ほどのお盆休みがあるので。

何しようかなと考えていたけど。

実家からヘルプの連絡が入ったので。

仕方なーく、実家に帰ることにした。

絶対に、前の職場にいたときは無視していたんだけどな。

「ただいまー」

崎陽軒のシウマイの袋と旅行バッグを持って。

実家ではなく、直接店を訪れる。

ちょうど、ランチタイムが終わって片づけをしている兄貴が目に入った。

我が家は静岡県内にあって。

祖母の代から、小さな洋食屋を営んでいる。

本当は私がこの店の3代目になるはずだったのに。

目の前で片付けをしている、この自由奔放な兄貴のせいで追い出されたのだ。

「あれ、お父さんとお母さんは?」

「親父は家で休んでる。お袋は買い物行ってる」

「あそ。お土産にシウマイ買ってきたわ」

荷物をカウンターの椅子に置くと。

私はすぐさまエプロンを着けて兄貴に「何すればいい」と訊いた。

「皿たまってるから片付けて」

「了解」

シンクにたまっているお皿を種類ごとに分けて洗浄機に押し込む。

その間、兄貴はディナーの仕込みに没頭している。

この店は、祖母が始めた店で。

お父さんが継いで。そして兄貴が継いだ。

私はこの兄貴が大嫌いだ。

「お前、ちゃんと仕事してんのか?」

「はぁ? 会っていきなり何なのさ」
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