距離感
うちの会社は、リフレッシュルームはあるのだが。

そこは狭いので。あまり、お昼時間は活用されない。

食堂があるわけではないので。

皆、外で食べにいくか自席で食べるか。

あとは、お昼のときに開放される会議室で食べるかのどれかだ。

香川さんと会社近くのお弁当屋さんでお弁当を買って、会議室の空いた席に座る。

(かなめ)さん大丈夫なんですかねー」

話題は要さんになって。

私が、要さんのスタイルの良さを褒めると。

香川さんはとても嬉しそうに「でしょ、素敵でしょ彼女」と言った。

「モデルさんみたいですよねー」

と香川さんに合わせて言うと。

香川さんは「あれ?」という感じで首を傾げた。

「モデルだったのよ、あかりちゃん」

知らなかったの? と言って香川さんは卵焼きをパクリと口に運ぶ。

「そうなんですか、初耳です」

「まぁ、モデルといっても10代の頃らしいけど。読者モデルって言うのかしら。雑誌に何度か載ったらしいわよ」

「そうなんですか。だからあんなにスタイル良いんですね」

香川さんはご馳走様でしたと言ってお弁当の容器をビニール袋に入れる。

「ただ、病気になっちゃって。それからはフリーターとしてやっていたそうよ」

「びょうき・・・」

何の病気なのかとは、訊けなかった。

香川さんがこれ以上は話さない…という空気を出していたからだ。
< 35 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop