距離感
「は?」

王子がアラフォー…?


その日はお酒が入っていたし、もしかしたら冗談で言われたのかもしれない。

しかしながら、嫌な予感はしていたので。翌週。

私の教育係である香川サンにさりげなく訊いてみることにした。

香川サンは50代ぐらいの品のある素敵な方で。

芸能人で言えば、どことなく宮崎美子さんを匂わせる人だ。

言葉遣いがとても綺麗で。

うちのお母さんと比べようにもならない、上の人だなと思ってしまう。

「あの、福王子さんがアラフォーとか何とか言っていたんですけど」

クリアファイルの向きを揃えて。

とんとん、と机の上で叩いて揃える。

「ああ、福王子くんね」

と言って香川サンは頷く。

「私も最初は20代かと思ってビックリしたわ。あかりちゃんと同い年だとばかり思っていたもの」

あかりちゃんとは後々、登場するが。

この会社に勤めている子だ。

「と、いうことはやっぱり…福王子さんは」

「えーと・・・、確か37歳って言っていたかしら」

さんじゅう・・・なな。

東京の人は皆、若く見えるのだろうか?

ここに来て、都会マジックって凄いなという変な思いが走る。

何をどうやったら、あのイケメンがアラフォーになるんだろうか。

魔法をかけられているとしか思えない。
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