距離感
そういえば、スタイルは良いけど。

ちょっとばかり痩せすぎているなとは思っていた。

でも、それは病気が何かってことを知って改めて気づいたことだ。

同い年の要さんが、深刻な病気であったという事実。

驚いた。

驚いたの次に思ったのは。

ハイハイ。

という冷めた思いだ。

心から同情はするけど。

心配という感情は一切湧かない。

嗚呼、冷たい人間なんだね。やっぱり私は。

所詮、他人事だと思った。

同情したところで何になるのか。

恋愛のライバルだからなのか。元から好きになれない人だからか。

冷静に考えると、自分は嫌な奴だと思う。

童話の世界で、どのキャラクターを演じるか選べと言われたら。

迷わず、シンデレラをイジめる継母か義姉を立候補してやる。

「勝又さん、ちょっといいかしら」

白い、正方形のお菓子の缶を持った香川さんが小声で自分の席に近づいてきた。

「あのね、あかりちゃんの入院費のカンパをね…」

「はぃ・・・」

いつかは自分のところに来ると思っていた。

でも、私は1円だって彼女にお金をあげたくない。

悪者でいたい。1円もあげたくありませんってはっきり言いたい。

でも、出来ない。

「すいません、香川さん。私、カンパとかわからなくて…。皆さん、いくらぐらいあげているものなんでしょうか?」

香川さんに聞こえるように立ち上がって、小さな声で言う。

「そうねぇ…。下は500円くらいから、上はウン万円かしらね。あ、でも強制じゃないから、嫌だったらイイのよ」

私はカバンから財布を出して、500円玉1枚を缶の中に入れた。

「すいません、今月色々と厳しくて」

一応、言い訳をして。

香川さんは「ありがとう」と言って他の人のところへ行く。

何か、虚しさが一気に背中にのしかかった気がした。
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