距離感
「福王子、またおまえか!」

フロアに響き渡る怒鳴り声。

最初は、ビックリして何度も声のするほうを見てしまっていたけど。

次第に慣れた。

近くに座っている人たちは「またか」とばかりに聞き流している。

この会社に来て、一ヵ月。

少しずつだけど仕事に慣れてきた。

と、同時にここで働いている人の人間性についても。

少しずつ知ることになる。

毎日のように怒られている王子を見て自然と悟った。

王子は殺人的に仕事が出来ない。

言葉を選べるというなら、本当にポンコツだと思った。

「おまえさぁ、ほんと顔だけだよなあ」

某番組のイヤミ課長ばりに、たっぷりと王子に向かって嫌味を言い放つ部長。

一方、王子と言えば、ヘラヘラ笑いながら「すんません」と謝っている。

なんという、メンタル・・・。

出逢った頃は見た目に引きずられてしまっていたけど。

こんなに仕事の出来ない人だったとは。

アラフォーでポンコツで。

そして、王子を見ていると。痛いなって思うのがもう一つある。
< 5 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop