距離感
王子の過去の話はあまりにも、重たすぎて。

家に着いて。安心したのか鼻血が止まらなくなった。

鼻にティッシュを詰め込んで。

上を向いていると、自然と涙が出てきた。

ああ、何やってるんだろう、私。

そりゃ、トラウマになるよね。

会社で刺されたら。

でも、働かなきゃ生活出来ないよね。

こんな腐った世界は、どうすることだって出来ないものなのだろうか。

「アヤさんかぁ…」

口に出してみると、もっと泣けた。

好きなのに別れてしまった。

だから、何年経っても王子の心には、アヤさんがいる。

だからか。

だから、周りの女子を(はじ)くのか。

王子にしては、無意識なんだろうな。

大変な男を好きになってしまったものだ。

私が万が一、王子に告白したところで。

彼女になれる確率なんて0%なのだ。

ボロボロと涙は止まらなくなる。

鼻が詰まってくる。

うぇっと吐きそうになる。

「写真もそうかー」

王子が写真嫌いなのは、ストーカーのせいだったのか。

でも、何で(かなめ)さんのフェイスブックには王子の写真が載ってたんだろ?

まあ、あの子のことだから駄々こねて写真撮ってもらって。

勝手に載せちゃったパターンだろうな

うん、もういいさ。

私も要さんも相手にされてないって、はっきりわかったから。

ざまあみろさ。

ああ、涙が止まらない。

明日からは、自分が出来ることをしよう。

王子がやる気出して働くかどうか。

それはもう、本人次第だから。

王子に合わせよう。

鼻に詰めたティッシュを出した。

立ち上がる。

明日の朝、目が腫れてないといいな。

「お風呂入ろ」
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