距離感
18時。
今日は定時で帰ることになった。
王子と一緒に会社を出ると。
あまりの寒さに身震いをしてしまう。
ポケットに手を入れて。
「今日も一日が終わりましたねー」
だなんて、言っていたら。
「カッチャン、あのね・・・」
と、言いにくそうに王子が話を切り出す。
「何ですか?」
足早に駅へと向かっていく人たちの中で。
王子はじっと私を見た。
その表情、やめてほしい。
キレイなカオで、私を見ないでほしい。
「あのね、カッチャン。明日から要ちゃんと一緒に行動していいかな」
「……」
王子の言葉に頭が真っ白になった。
階段を下りて。
改札機にパスモをかざして。
ホームへ向かう間。お互い、黙った。
お互い、足を止めて。
電車を待っている間。王子は話を続けた。
「要ちゃん、またちょっと不安定になっているみたい」
「……王子の自由にしたらいいんじゃないですか」
王子の目を見て言うことができなかった。
バレないように、俯いて。小さくため息をついた。
卑怯者。
やっぱり、王子は卑怯だ。
私は「嫌です」だなんて言えない。
「嫌です」と否定する権利だってない。
私は、王子にとって。何者でもない。
同じ会社で働いていて、ご近所さんっていうだけで。
王子の日常生活で、やりたいことを否定する権利なんて。
ないんだ。
「ありがとう。あ、ちゃんと、遅刻はしないし。仕事はちゃんとするって約束するから!」
「…当たり前ですよ」
いつもより、低い声が出た。
あれ、私ってこんなに弱い人間だったのかなって。
思ってしまう。
泣きそうだった。
でも、そこは根性で我慢した。
下唇をぐっと噛んだ。
今日は定時で帰ることになった。
王子と一緒に会社を出ると。
あまりの寒さに身震いをしてしまう。
ポケットに手を入れて。
「今日も一日が終わりましたねー」
だなんて、言っていたら。
「カッチャン、あのね・・・」
と、言いにくそうに王子が話を切り出す。
「何ですか?」
足早に駅へと向かっていく人たちの中で。
王子はじっと私を見た。
その表情、やめてほしい。
キレイなカオで、私を見ないでほしい。
「あのね、カッチャン。明日から要ちゃんと一緒に行動していいかな」
「……」
王子の言葉に頭が真っ白になった。
階段を下りて。
改札機にパスモをかざして。
ホームへ向かう間。お互い、黙った。
お互い、足を止めて。
電車を待っている間。王子は話を続けた。
「要ちゃん、またちょっと不安定になっているみたい」
「……王子の自由にしたらいいんじゃないですか」
王子の目を見て言うことができなかった。
バレないように、俯いて。小さくため息をついた。
卑怯者。
やっぱり、王子は卑怯だ。
私は「嫌です」だなんて言えない。
「嫌です」と否定する権利だってない。
私は、王子にとって。何者でもない。
同じ会社で働いていて、ご近所さんっていうだけで。
王子の日常生活で、やりたいことを否定する権利なんて。
ないんだ。
「ありがとう。あ、ちゃんと、遅刻はしないし。仕事はちゃんとするって約束するから!」
「…当たり前ですよ」
いつもより、低い声が出た。
あれ、私ってこんなに弱い人間だったのかなって。
思ってしまう。
泣きそうだった。
でも、そこは根性で我慢した。
下唇をぐっと噛んだ。