距離感
王子の目を見て言った。

王子は、「ん?」という顔をした。

「それは、ライクってことだよね?」

「ライクじゃないです。ラブですよ」

「え…」

明らかに困惑の表情を浮かべている。

「ねぇ、これは罰ゲームなのかな? 誰かに命令されたの?」

優しげな口調だった。

どうして、勇気をだして告白したのに。

そんなことを言われなきゃいけないのだろう。

我慢していたけど。

涙が溢れた。

「すいません。王子が東京に行く前に好きだって思いを伝えたかったんです」

「……」

「言えて、良かったです。東京でもお元気で。ありがとうございました」

深々と頭を下げる。

もう一度、王子の顔を見た。

「じゃあ、さようなら」

と、言って。帰ろうって思った。

「ちょっと、待って」

王子は私の腕をつかんだ。

「もう少し時間もらえないかな? もう少し話そうよ」

「……」

この涙でぐっちゃぐちゃの顔を見られてるのかと思うと。

余計に落ち込んだ。
< 86 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop