距離感
私の家に、来てもらうことになった。
「散らかってますけど、どうぞ」
1Kの狭い家に男の人を招くのは初めてだった。
電気をつけて。
王子に、そこに座るように指さす。
「もう少し話そうよ」と言われたけど。
話す場所がなかった。
私が泣いてしまったから。
どこか店に入るにしても、無理だった。
だったら、家に来てくださいと伝えた。
王子は何も言わずについてきた。
「今、お茶用意しますね」
電気ケトルに水道水を入れる。
コンセントに差し込む。
マグカップを2つ出して。
ココアしかない…。
まあ、いいかとココアの粉末をマグカップに入れる。
ふと、王子を見ると。
居心地悪そうに、座り込んでいる。
「どうぞ」
テーブルの上にマグカップを置く。
王子の隣に座ると。
王子は正座していたので驚いた。
「足、楽にしてくださいな! 何で正座?」
「いや…、なんか正座する雰囲気じゃない?」
「いいから、崩してください!」
最後まで、王子らしいなと思ってしまう。
「話の続きですけど」
「うん…」
「ちゃんと、告白の返事してくれますか?」
「うん…ごめん」
やっぱりな。
王子は目を合わせようとしない。
「カッチャンとは付き合えない」
「はい。わかってます」
「ごめん。今は、誰とも付き合えない」
「はい。そんな感じだと思ってました」
わかってはいたけど。
やっぱり、否定されると涙が出てくる。
「私が王子のこと好きだって気づいてました?」
「…ごめん。ニブくて」
王子が頭を下げた。
「結構、わかりやすかったと思うんですけど」
「ごめん。ほんと鈍くて」
また、王子が頭を下げる。
ティッシュで鼻をかんで。
王子を見る。
「俺ね、てっきり。カッチャンは俺のこと馬鹿なオジサン程度に見てると思ってた」
「……」
「放っておけないと思ったから、助けてくれてたんだと思ってた」
「違いますよ」
声が小さくなる。
「それに、カッチャンは誰か好きな人がいるのかなって」
「それは、貴方ですって」
小さく突っ込んだが、王子は話をやめない。
「前に、婚約破棄したって言ってたから。てっきり、相手の人のことずっと思っているのかとばかり…」
「それは、もう過去のことですから」
自分で言って。
ああ、もう解決しているんだと思った。
あんだけ、苦しかったのに。
ちゃんと自分の中で、消化出来たのかと思った。
「ずっと。モヤモヤしてました。多分、私は王子と初めて逢ったときから好きだったんだと思います」
「ごめん…」
「謝るのやめてもらえません? 惨めじゃないですか」
「散らかってますけど、どうぞ」
1Kの狭い家に男の人を招くのは初めてだった。
電気をつけて。
王子に、そこに座るように指さす。
「もう少し話そうよ」と言われたけど。
話す場所がなかった。
私が泣いてしまったから。
どこか店に入るにしても、無理だった。
だったら、家に来てくださいと伝えた。
王子は何も言わずについてきた。
「今、お茶用意しますね」
電気ケトルに水道水を入れる。
コンセントに差し込む。
マグカップを2つ出して。
ココアしかない…。
まあ、いいかとココアの粉末をマグカップに入れる。
ふと、王子を見ると。
居心地悪そうに、座り込んでいる。
「どうぞ」
テーブルの上にマグカップを置く。
王子の隣に座ると。
王子は正座していたので驚いた。
「足、楽にしてくださいな! 何で正座?」
「いや…、なんか正座する雰囲気じゃない?」
「いいから、崩してください!」
最後まで、王子らしいなと思ってしまう。
「話の続きですけど」
「うん…」
「ちゃんと、告白の返事してくれますか?」
「うん…ごめん」
やっぱりな。
王子は目を合わせようとしない。
「カッチャンとは付き合えない」
「はい。わかってます」
「ごめん。今は、誰とも付き合えない」
「はい。そんな感じだと思ってました」
わかってはいたけど。
やっぱり、否定されると涙が出てくる。
「私が王子のこと好きだって気づいてました?」
「…ごめん。ニブくて」
王子が頭を下げた。
「結構、わかりやすかったと思うんですけど」
「ごめん。ほんと鈍くて」
また、王子が頭を下げる。
ティッシュで鼻をかんで。
王子を見る。
「俺ね、てっきり。カッチャンは俺のこと馬鹿なオジサン程度に見てると思ってた」
「……」
「放っておけないと思ったから、助けてくれてたんだと思ってた」
「違いますよ」
声が小さくなる。
「それに、カッチャンは誰か好きな人がいるのかなって」
「それは、貴方ですって」
小さく突っ込んだが、王子は話をやめない。
「前に、婚約破棄したって言ってたから。てっきり、相手の人のことずっと思っているのかとばかり…」
「それは、もう過去のことですから」
自分で言って。
ああ、もう解決しているんだと思った。
あんだけ、苦しかったのに。
ちゃんと自分の中で、消化出来たのかと思った。
「ずっと。モヤモヤしてました。多分、私は王子と初めて逢ったときから好きだったんだと思います」
「ごめん…」
「謝るのやめてもらえません? 惨めじゃないですか」