嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
小宮先生がわたしのバッグを取ってきてくれるということで、お言葉に甘えて待っていると、コンコンとドアが鳴った。


「入っていいですよ」というと、扉の奥から顔を覗かせたのは赤星くんだった。



「ことちゃん、大丈夫?」


「あぁ、はい、なんとか」


「それにしてもひどい傷だ...。ごめんね、守ってあげられなくて」



赤星くんが頭を撫でてくれる。


その優しさが、今のわたしには痛い。


わたしは赤星くんの手を止め、



「ごめんなさい」



と言って赤星くんの手をどかした。


目を見開き、わたしを見つめる赤星くん。


わたしは、赤星くんを真っ直ぐに見た。


わたしのわがままを聞いてほしくて。



「赤星くん」


「ことちゃん、俺、グランプリ取ったんだよ。だから、約束、守ってもらわないと困る。俺とことちゃんが正式に付き合えば、俺は堂々とことちゃんを守れる。だから...」


「それはできません」


「どうして?約束した...よね?」



わたしは、涙が出るのを必死にこらえた。


ここで泣いたら、わたしは負けだ。


ずっと誰かに頼って生きていくようになってしまう。


そして、誰も幸せに出来ない。


わたしは今まで散々な人生だった。


今だってこんなんだ。


いじめられて、しくしく泣いている。


けれど、そんなので人生終わりにしたくない。


わたしは、自分がした選択で未来を変えたい。


その未来では皆に笑っていてほしい。


だから...。



「赤星くんは知っていますよね、わたしの姉が誰なのかを」


「ことちゃん...」


「わたしは姉と再会し、姉には赤星くんが必要だと判断しました」


「ことちゃん、必要とかそういうことじゃない。俺はことちゃんが好きで、一緒にいたいのはことちゃんなんだよ」



わたしは首を真横に激しく振った。



「全ての好きがうまくいかないと、わたしは分かりました。赤星くんの好きも...それです」


「ことちゃん、もしかして美湖に何か言われたの?何かされたの?」


「言われましたし、されました。けれど、それとこれとは別です」


「なら、どうして...。どうして約束を守ってくれないの?」



赤星くんの顔を見るのが、辛い。


しかし、怯んではいけない。


わたしには輝く未来が見えている。


その未来にはこの選択しかないんだ。


赤星くん、ありがとうございました。


そして、さようなら。



「赤星くん。姉にはあなたが必要なんです。100パーセント必要なんです。わたしは、あんな感じの姉だけど、わたしのたった一人の姉だから幸せになってもらいたいんです」


「ことちゃん...」


「一條美湖の妹のわたしから一生のお願いです。姉を幸せにしてください。...よろしくお願いします」
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