嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
「ったく、全く客こねえじゃねえか!せっかく戦力が一人増えたっつうのに...。ああ、もう、やめだ!今日は店終いにするぞ!」
お父さんが閉店時間より1時間も早く切り上げた。
"飯は用意しておくから、とっと練習して来い"と送り出され、エプロン姿が妙に違和感のある青柳くんとわたしは店を出た。
青柳くんは水槽にりんごを8こ浮かべた。
末広がりの8という、青柳くんなりのこだわりであるが、この水槽にりんごが渋滞する形になり、なんだか見ているとぞくぞくする。
集合体恐怖症と言われる現象かもしれない。
わたしは昔から西瓜の種も蛙の卵もワラビの胞子もトウモロコシの粒々も嫌だった。
しかし、ここに来て集合体が嫌いだから出来ないなんて言えない。
水嫌いも乗り越えて人助けもしたんだから、大丈夫。
やれるよ、湖杜。
自分に言い聞かせてスタンバイする。
「星名、準備は?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、始める。よーい...スタート!」
青柳くんの掛け声と共に、ストップウォッチが押され、わたしは狙いを定め、りんごに噛みついた。
のは、良かったが...
全然取れない!
「はい、1分経過」
今回のミスコンのルールでは3分以内に取れなければ失格となる。
あと2分しかない。
焦れば焦るほど、りんごが遠ざかる。
りんごに噛りつこうと必死になればなるほど水がかかる。
「2分経過。残り1分」
ああ...どうしよう。
追いかければ追いかけるほど逃げられる。
水もばしゃばしゃかかる。
時間も迫る。
ああ...どうしよう。
「残り10秒」
あわわわわ...。
やばびーーん。
プラス
ずっぎょぎょーーん。
「はい終了」
パニックに陥っている内に終わってしまった。
疲れ果てたわたしは座り込んだ。
勝ち目...ない。
りんごにも嫌われてはどう足掻いてもグランプリなんて取れない。
「星名、もっとずけずけ行けよ。らしくねえよ」
「そう言われても...」
そのわたしらしさが人々を傷つけているんだ。
らしさを発揮してはならない。
おしとやかに美しく取って勝たねば、また何か不幸を呼んでしまいかねない。
「じゃあ、オレ、やってみる」
「いや、無理してやらなくても...」
「無理なんかしてねえ。オレがやりたいからやるんだ。お前は黙って見てろ」
わたしは青柳くんからストップウォッチを渡された。
いいから、よく見とけ。
そう言わんばかりの顔でこちらを見つめる。
「では始めます。よーい、スタート!」
と言った次の瞬間。
―――えっ...?!
青柳くんはりんごをくわえていた。
瞬殺とはまさにこのこと。
顔もほぼ濡れず、美しいフィニッシュだった。
「青柳くん、すごいです!」
「前歯で凹んでるとこをがっといけば、取れる。練習すれば星名も出来るようになる。絶対に」
青柳くんはそう言うと、りんごをわたしに差し出してきた。
「これ、皮剥いて。デザートとして食う」
「分かりました」
りんごを受け取り、立ち去ろうとすると、青柳くんに腕を掴まれた。
お父さんが閉店時間より1時間も早く切り上げた。
"飯は用意しておくから、とっと練習して来い"と送り出され、エプロン姿が妙に違和感のある青柳くんとわたしは店を出た。
青柳くんは水槽にりんごを8こ浮かべた。
末広がりの8という、青柳くんなりのこだわりであるが、この水槽にりんごが渋滞する形になり、なんだか見ているとぞくぞくする。
集合体恐怖症と言われる現象かもしれない。
わたしは昔から西瓜の種も蛙の卵もワラビの胞子もトウモロコシの粒々も嫌だった。
しかし、ここに来て集合体が嫌いだから出来ないなんて言えない。
水嫌いも乗り越えて人助けもしたんだから、大丈夫。
やれるよ、湖杜。
自分に言い聞かせてスタンバイする。
「星名、準備は?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、始める。よーい...スタート!」
青柳くんの掛け声と共に、ストップウォッチが押され、わたしは狙いを定め、りんごに噛みついた。
のは、良かったが...
全然取れない!
「はい、1分経過」
今回のミスコンのルールでは3分以内に取れなければ失格となる。
あと2分しかない。
焦れば焦るほど、りんごが遠ざかる。
りんごに噛りつこうと必死になればなるほど水がかかる。
「2分経過。残り1分」
ああ...どうしよう。
追いかければ追いかけるほど逃げられる。
水もばしゃばしゃかかる。
時間も迫る。
ああ...どうしよう。
「残り10秒」
あわわわわ...。
やばびーーん。
プラス
ずっぎょぎょーーん。
「はい終了」
パニックに陥っている内に終わってしまった。
疲れ果てたわたしは座り込んだ。
勝ち目...ない。
りんごにも嫌われてはどう足掻いてもグランプリなんて取れない。
「星名、もっとずけずけ行けよ。らしくねえよ」
「そう言われても...」
そのわたしらしさが人々を傷つけているんだ。
らしさを発揮してはならない。
おしとやかに美しく取って勝たねば、また何か不幸を呼んでしまいかねない。
「じゃあ、オレ、やってみる」
「いや、無理してやらなくても...」
「無理なんかしてねえ。オレがやりたいからやるんだ。お前は黙って見てろ」
わたしは青柳くんからストップウォッチを渡された。
いいから、よく見とけ。
そう言わんばかりの顔でこちらを見つめる。
「では始めます。よーい、スタート!」
と言った次の瞬間。
―――えっ...?!
青柳くんはりんごをくわえていた。
瞬殺とはまさにこのこと。
顔もほぼ濡れず、美しいフィニッシュだった。
「青柳くん、すごいです!」
「前歯で凹んでるとこをがっといけば、取れる。練習すれば星名も出来るようになる。絶対に」
青柳くんはそう言うと、りんごをわたしに差し出してきた。
「これ、皮剥いて。デザートとして食う」
「分かりました」
りんごを受け取り、立ち去ろうとすると、青柳くんに腕を掴まれた。