嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
文化祭前日まで、わたしの私物は毎日1つずつなくなった。


ペンケースに入っているボールペンは、大事な色からなくなり、お気に入りだったシャーペンはチビになるまで使っていた思い出の消しゴムと共に消えた。


ジャージが何故か実験室のごみ箱に捨てられていたり、教科書が便器の中に突っ込まれていたり、ノートが落書きされていたりした。


小宮先生にも相談したが犯人は未だに見つかっていない。


当日も何かされるのではないかという不安があるけれど、今は目の前のことに集中しなくては...。


わたしのクラスは、明日から2日間、
粉もの屋となる。


たこ焼き、お好み焼き、焼きそばの3つを手分けして作る。


材料を使い回し出来て、人気が高いため廃棄も少ないと予想し、この3品が選ばれた。


夏祭りみたいだなぁと思いながら、わたしは担当になったたこ焼きを作るシュミレーションをしていた。



「はーい、タコさんとーちゃーく!」



買い出しにいっていた園田さんが帰ってきて、ようやくタコを切り始める。


すでに一口大に切ってあるタコを更に2等分する。



「タコさん、可哀想ですね...」


「言うと思ったよ、ことちゃん」


「どうしてわたしの心が読めるんですか?」


「そりゃ、もちろん、友だちだからねえ」



タコを切ってはジップロックに入れるを繰り返した。


わたしと園田さんがタコを家庭科室の冷蔵庫に入れに行くと、わたしはあごが外れかけた。


―――なんで...


なんでいるのぉ?!



「あっ!こと先輩に百合野先輩!」


「久しぶり、白鷺くん」


「お久しぶりっす。先輩たちは...おーっと、タコっすね!じゃあ、ライバルだ」


「へぇー、白鷺くんのクラスもタコなんだ」


「そうなんすよ。うちのクラスにたこ焼き屋チェーンの社長令嬢がいて"パパのために全力でタコ作ります!"とか言っちゃったから、有無を言わさずタコになっちゃったんすよね~」



園田さん、笑ってる。


思っていたよりも大丈夫そうで安心した。


白鷺くんもわたしにべたべたして来ないし、さすがに諦めたのかな?


それなら、何よりだ。


わたしを諦めたなら、ほら、隣を見て!


ロングヘアがお似合いの、とても頼れる、いつでも元気100倍、笑顔いっぱいな園田さんがいます!


だからお願いします。



「付き合って下さい!」


「ことちゃん?!」



ほへ?


ふほ?


わたし、


なんか...やらかしました!


何を言うとんねん、わたしは!


わたしは、白鷺くんの前で大きくばつを作る。



「い、今のはなしなしです!ちゃいますから、ほんま!」



なんで、このタイミングで関西弁なの?


もしかして...たこ焼きのせい?


本当にわけ分からへん!


パニックになって頭が混乱してしもうてるわ。


はぁ...、どげんかせんといかん。


って、それは関西弁じゃないけど。


と、謎の現象が繰り広げられている中、終始お腹を抱えて笑っている2人。


そんなに面白い?


あんまり笑われちゃうと余計に調子狂う。


わたしはもはや何も言わず、何もせず、その場にフリーズした。


落ち着かせるんだ、自分を。


しっかりするんだ、星名湖杜!



「ことちゃん」



園田さんがわたしの手を握る。



「帰ろっか」



わたしは赤べこのように何度も規則正しく首をふった。



「じゃ、あたしたちはこれで。お互い、全力を尽くしましょ。あと、白鷺くんは、ミスターコンテスト頑張ってね」


「百合野先輩、ありがとうございまっす!絶対グランプリ取りますから!波琉先輩じゃなくておれに入れてくださいね!」



園田さんはやれやれという表情をしながらも、どこか嬉しそうな感じで、わたしを連れて家庭科室を出た。
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