嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
クラスの準備が終わり、わたしはチア部の練習がある園田さんと分かれ、1人で生徒会室の横を通る。


あの日以来、赤星くんとはあまり話していない。


そもそも、この文化祭全体の実行委員長で当日の総合司会もやるのだからわたしにかまっている暇なんて無かったのだ。


気になってわたしは引き返した。


生徒会室のドアをそっと開け、中を覗くと、赤星くんが壁に向かって何やらぶつぶつ話しかけていた。


赤星くんの邪魔をしないようにしばらく黙って見守っていたのだけれど、



「俺と...付き合って下さい!」



と赤星くんが言い終わり、前を向いた瞬間に目があってしまった。


あっちゃーと頭をかきむしりながらわたしに近寄ってくる赤星くん。


わたしは後ずさることなく、赤星くんと対峙した。



「いつから聞いてた?」


「えっとぉ。何を話されているのかまではきこえませんでしたが、"付き合って下さい"は聞き取れまして...。そのぉ、約5分ほど聞いておりました」


「マジか」


「はい。マジ、です」



赤星くんの右手が頭の上に乗る。


慣れてしまったのか、胸は高鳴らない。


代わりに、なぜだか青柳くんの顔がちらついて、心がしゅくんとした。



「ほんと、ことちゃん、かわいい」


「また襲わないで下さいね」


「俺、今、狼自粛中だから」



はぁ...。


分かるような、分からないような。


はい、やっぱり分かりません。


開き直って顔を上げると赤星くんと目が合った。



「本当はさ、言わないでおこうと思ったんだけど」



そう前置きし、赤星くんはわたしを中へと入れた。



「ことちゃん」


「はい」


「俺と1つだけ約束してくれる?」


「約束...ですか?」



赤星くんはいつになく緊張しているようで、手が小刻みに震えていた。


何でもそつなくこなし、完璧なように思われている赤星くんでも緊張してしまうことがあるんだなと分かり、なんだか赤星くんが近い存在に感じた。


わたしの知らないことを色々知っていて、わたしより何倍も大人で、雲のように遠い存在だと思っていた。


赤星くん。


わたしは、あなたと約束したいです。


赤星くんもわたしも、どこか弱くてどこか似ているから。


繋がればきっと最強ですよ。



「星名湖杜さん。俺がミスターコンテストでグランプリを取ったら、付き合って下さい!」



なんちゅうこと?!


すごごごぎょ!


ぎゃばびびびーん!


わたし、


今日、


人生初、


男子から


愛の告白、


されちゃいました...。



「俺ね、今、ことちゃんにキスしたいのすっごく我慢してるんだ。だから...」


「分かりました。我慢したらご褒美が必要ですからね。その約束...いたしましょう」



わたしは小指を赤星くんの小指に絡めた。



「がんばってくださいね」


「ことちゃんも頑張って」


「はい。がんばります!」
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