嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
腹が減ったのでコンビニでおにぎりを買い、大好きな天然水をたっぷり飲み、腹を膨らませた。


10時になるまで食事以外で金を使わずに無料のエアコンとスピーカーに頼った。


海風にたそがれていると時間が迫ってきたので駅前に移動した。


駅にはまずまず人がいた。


そりゃ海よりはいるとおもったが、想像以上だ。


会社帰りのサラリーマンやOLがちらほら歩いているし、10時ともなると塾帰りの小・中学生もそこに紛れて構内へと向かっていく。


その中に、汐泉の姿を探した。


もはや、こうやって汐泉を探すことも、汐泉と会うことも全て義務のように感じてしまう。


そして最近の悩みは...



「波流くん、お待たせ!」


「今日もお疲れ」



オレは決まり文句を言って汐泉の荷物を持とうと手を差し出した。



「あっ、今日は大丈夫。あんまりテキスト入ってないから」



汐泉はバッグを持つ手に力を入れた。


オレは少し違和感を感じた。


いつもなら、"疲れた"と言い、持ってアピールをするのに今日は逆だからだ。


バッグの中にオレに見られたくない何かが入っているのだろうか。


そう思えば、髪型も服装も違う。


塾の時は制服で、それ以外ではスカートなのに珍しくパンツだ。


おそらく初めてだと思う。


髪は1つに結ばれている。


似合う、似合わないとかではなく、なぜいつもと違うのか。


それが気になって仕方がなかった。


オレに何か隠し事をしているのではないか。


だとしたらそれはなんだ?


オレが汐泉に疑いの目を向けると、汐泉はにっこり笑った。



「明日、あたし朝早いから、今日はここでちょっと話したら帰るね」


「ああ、うん」


「本当はもっと一緒にいたいんだけどね。残念だなあ」


「ああ」



オレの呟きと同時に汐泉の重みがオレに乗っかった。



「汐泉、どうした?」


「波流くん、変わったよね」


「えっ...?」


「それって、あの子のせいだよね」



意味が分からない。


汐泉はオレに何を言おうとしているんだ?


汐泉がオレをぎゅっと抱きしめる。


オレはただ、彼女に抱かれていた。



「明後日、絶対行くから。波流くん、グランプリ、取ってね」



オレは頷いた。


けれど、何も言わなかった。



「波琉くん、約束して」



汐泉がオレから身体を離し、オレをまっすぐに見つめた。


両手をぎゅっと握られる。



「優勝してもわたしだけの王子様でいて下さい」
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