嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
「では、無事に天国へ辿り着けますように...。行ってらっしゃい!」



係りの3年生の先輩に手を振られたのでわたしは手を振り返した。


青柳くんは、そんなわたしを無視して先に進んでいった。


置いていかれないようにしないとなぁ。


わたしは恐る恐るお化け屋敷に入っていった。


ではなく、


出棺致しました。


青柳くんが照らす光りだけが頼り。


真夜中の病院という設定だから、ストレッチャーやベッドが置かれ、生死をさまようゾンビや包帯でぐるぐる巻きにされた方々がうろついている。


たまに首だけが道の真ん中に転がっていたり、冷風が吹いてきたりして背筋が凍りつく。


はぁ...。


ふぅ...。


怖いけど、先輩方だから。


大丈夫、人間だから。


わたしは怖さをまぎらわすべく、お化けに話しかけながら進んだ。


制服を着たままさ迷うお化けには、



「あなたなら、ちゃんと成仏できます。天国でも楽しいことがきっとたくさんありますから、心配せず逝って下さい」



と言った。



ベッドで苦しんでいた老婆には



「最後はお辛かったですね。でも、大丈夫です。必ず天国に行けますから。安心して眠りについて下さい」



と言った。



先に交通事故で恋人を亡くしたという男性には



「あなたを天国で待っている人がいます。その人に会いたいですか?会いたいなら、早く行ってあげてください。大丈夫です。あなたを愛しているから」



と言った。



みんなそれぞれ悩んでいたみたいだけど、最後には"ありがとう"と言い、嬉しそうに去っていった。


お役に立てたなら嬉しいな。


お化けと会話できる女。


なんか、すごいかも。


わたしはうきうきしながら、前を行く青柳くんを目指して歩いた。
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