嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
青柳くんとの距離、実に5メートル。


進んではいるみたいだけど、身が縮こまり、へっぴり腰になっている。


わたしのことも気付かないくらい、恐怖に侵されているみたいだ。


よし、決めた!


どっきり大作戦決行!


青柳くんが後ろを振り返りそうになったら、飛びかかってやる。


よーし、いつでもかかってこい!


わたしがそろり、そろりと足を動かしていると、青柳くんは急停止した。


ということは、つまり。


今が時だ。



「わっ!」



と脅かすと、



「うわっ!!」



と悲鳴を挙げ、青柳くんは尻餅をついてしまった。


だいっせえこぉ!


笑いたくなるのを必死にこらえて、青柳くんに嫌みを言ってみる。



「青柳くん、わたしですよ。わたしに驚くなんて失礼じゃないですか?!」


「バカ!驚いてねえ!お化け共がちっとも襲って来ないから、わざとやってやったんだよ!」



あぁ、だめだ。


わたしはこらえきれなくなってお腹を抱えて笑った。


なんでお化け屋敷で笑えるんだ、コイツは。


なんて思われてるんだろうな。


わたしが笑っていると、突然青柳くんは意味深に



「じゃあな、星名」



と言った。


その直後。


わたしには...見えた。



「何言ってるんですか?...って、後ろ...」



背後を指差し、恐怖を煽る。


首を小刻みに揺らしている。


すぐそこまで近付いてきている恐怖。


青柳くんは恐る恐る振り返った。



「んぎゃーーっ!」



「青柳くん!」



わたし、今日、はっきり分かった。


青柳くんはビビりだ。


園田さんの言っていた通り、お化けさんが苦手で、1度恐怖に捕らわれると全てが恐怖の対象になり、ひどく怖がる。


本当におもしろい人だな。


やっぱり、友だちになれて良かった。


わたしは青柳くんを追って走った。



「青柳くん、勝手に行かないで下さい。わたしはちゃんとお化けさんにお別れの挨拶をして来ているんですよ」


「は?」


「あなたは1人じゃないから大丈夫です。強く願えばきっと天国へ行けます。天国では、あなたより先に川を渡った人たちがあなたを待っています。だから、信じて逝ってください。
...とこれは一例ですが、このようにお一人お一人にお伝えしてきたので遅くなりました」



わたしが熱弁を振るうと、青柳くんは観念したように言った。



「分かったよ。ここからは置いていかねえし、演技もしない。本気でお化けと立ち向かう」


「では、参りましょう!」
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