嵐を呼ぶ噂の学園③ 大嵐が吹き荒れる文化祭にようこそです!編
文化祭の片付けをし、ふらふらとした足取りで家路を歩いていた。


自転車に乗る体力はまだあるが、気力がなかった。


今日1日で1年間分の心労を溜め込んだ感じがする。


体も心も重い。


雨が上がり、少しだけ雲の合間から太陽が顔をのぞかせている。


はあ...。


それでも溜め息をついてしまう。


たった1日で起こった変化に適応できない。


百合野は白鷺と見事くっつき、いい感じで終わるかと思ったら、そうはいかなかった。


爆弾発言をした汐泉に怒り狂い、片付けがはかどっているのかどうなのか。


そして、汐泉。


わざと百合野に喧嘩を売ったようにも感じなくはない。


つまり、汐泉が星名を...。


そんなわけ...無いよな?


無いって信じてもいいよな?



―――ププーッ!



オレは知らぬ間に道路の真ん中を歩いていたようだ。


漆黒のリムジンにクラクションを鳴らされてしまった。


オレは、俊敏に道路の左側に避けた。


つうか、どこの富豪が乗ってんだよ、あんなの。



「あれって美湖様とお母様の美杜( みもり)様が乗ってるやつだよね?」


「いやあ、さすが大女優と新人賞総ナメ女優は違うねえ。一体いくら稼いでるんだか」


「やっぱ...億じゃない?」


「それプラス今日のグランプリの賞金でしょ?いやあ、すごすぎ」


「ってか、今日の賞金は小遣いみたいなもんじゃない?」


「たしかに...。羨ましい限りだわ」



オレの数メートル後方を歩く女子たちの話を聞いてオレは身震いした。


同じ高校生だというのに、億稼いでいるなんて信じられない。


100万が小遣いだというなら、その金、オレにくれよ。


そしたらもっといい部屋に住めんのに。


オレは立ち止まり、空を見上げた。


真夏は完全に過ぎ去り、すっかり秋の空になっていた。


肌をすり抜ける風が心地いい。


これが唯一の癒しだった。


そんな秋もあっという間に過ぎ去ってしまうのかな?


オレはまだ終わってほしくないが。


というより、終われないんだ。


こんなに課題を残して終われるわけがない。
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