【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
知られたくないこと
ちょっと待って、一緒に暮らすだって?
諏訪さんが朝イチの打ちあわせに出ていったあとで、ふと我に返った。
男性と一緒に暮らす? そりゃ、結婚するならひとつ屋根の下に暮らすのはあたり前とはいえ……、この私が男性と暮らす?
気を落ち着けるため、キャビネットからドリンクボトルを取り出す。
「ハーブティだね、リラックスできる香りだ」
いきなり歌うような声がして、思わずボトルのふたを勢いよく閉めた。
いつの間にか刈宿CMOが目の前に立っていた。諏訪さんと同じくらいの長身で、年齢も近い。たしかひとつかふたつ、刈宿さんのほうが上だったはず。
だけど諏訪さんより何倍も……、なんというか、キラキラしている人だ。言葉も仕草も。ついでに髪の色も明るく、天井のライトに波打ってきらめいている。
女性にも人気がある。私の知るかぎりでは。
「おはようございます。申し訳ありません、諏訪さんは打ちあわせ中で……」
「知っているとも。その前に話せたらと思って来たのに、彼は時間に正確だね」
「10時にはお戻りになる予定ですが」
彼が私の手元に目をやり、なぜかウィンクをした。
「きみはドリンクを持参するタイプだったのだね、家庭的ですばらしい」
「家庭的かどうかは……」
私はそろそろとボトルをキャビネットに戻した。
自分が話題になるのは苦手だ。ものすごく気を使われているような気分と、なにを言われてもからかわれているような気分を同時に味わうからだ。
「ご伝言がありましたら承ります」
「いやいや、メールしておくから大丈夫だよ。きみは秘書じゃない、アシスタントだろう? 諏訪くんを甘やかしすぎじゃないかな」
「そんなことはないと思いますが……」
「彼も、きみに対しては妙に甘えるというか、遠慮がなくなるところがある。同じ男として、どうかと思うことも多いよ」
明るいベージュのジャケットの腕を組み、大仰に顔をしかめてみせる。
諏訪さんもたいがい自信家だけれど、刈宿さんからはまた違う種類の自信の圧を感じる。